著者
飯田 健 上田 路子 松林 哲也
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.139-153, 2011 (Released:2017-06-12)
参考文献数
25

昨今の日本政治において「世襲議員」は国会議員の最大で3分の1を占めるなど顕著な存在となっている。これまでマスコミ,評論家,政治学者などが世襲議員について再三論じてきたが,そもそも印象論的な議論も少なくなく,厳密な実証分析を行ったものは多くは存在しない。そこでわれわれは新たに構築した包括的なデータセットを用いて世襲議員の属性や政策に対する影響力を実証的に分析し,世襲議員をめぐる今後の議論に一つの材料を提供したい。本論文では,まず世襲議員の特徴を非世襲議員との比較において明らかにする。そして政策に対する影響力の一例として,世襲議員の補助金分配過程への影響を検証する。分析の結果,世襲議員は選挙における地盤や資源に恵まれており,選挙に強く,当選回数が多いということ,さらに世襲議員は自分が代表する地域により多くの補助金をもたらすということが示された。
著者
飯田 健 上田 路子 松林 哲也
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.139-153, 2011

昨今の日本政治において「世襲議員」は国会議員の最大で3分の1を占めるなど顕著な存在となっている。これまでマスコミ,評論家,政治学者などが世襲議員について再三論じてきたが,そもそも印象論的な議論も少なくなく,厳密な実証分析を行ったものは多くは存在しない。そこでわれわれは新たに構築した包括的なデータセットを用いて世襲議員の属性や政策に対する影響力を実証的に分析し,世襲議員をめぐる今後の議論に一つの材料を提供したい。本論文では,まず世襲議員の特徴を非世襲議員との比較において明らかにする。そして政策に対する影響力の一例として,世襲議員の補助金分配過程への影響を検証する。分析の結果,世襲議員は選挙における地盤や資源に恵まれており,選挙に強く,当選回数が多いということ,さらに世襲議員は自分が代表する地域により多くの補助金をもたらすということが示された。
著者
松林 哲也 上田 路子 澤田 康幸
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では(1)自殺報道が一般の人々の自殺に与える影響、(2)これまでの自殺対策の効果の検証、(3)人々を取り巻く制度環境が自殺に与える影響、の3課題についての研究を推進してきた。統計分析の結果、著名人の自殺報道に対しツイート上で大きな反応があった場合にのみ自殺者数が増えること、経済状況の好転が自殺率の低下につながっている可能性があること、鉄道駅のホームドアには強い自殺防止効果があること、早生まれの若者の自殺率が高いこと、学年暦と若者の自殺数には強い相関があること、誕生日前後には自殺が増えることなどが明らかになった。
著者
松林 哲也 上田 路子
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.94-109, 2012 (Released:2017-09-29)
参考文献数
31
被引用文献数
4

本稿は女性の市町村議会への参入を説明するために,市町村の人口規模の役割に注目する。市町村の人口規模が小さい場合,当選に必要な票数が少ないので候補者は個人として議席を争う傾向にある。候補者中心の選挙では,男性に比べ政治的意欲や資源が乏しいことが知られている女性の立候補や当選は難しくなるだろう。結果として女性候補者や議員の割合が低くなると予測できる。一方で,市町村の人口規模が大きい場合,当選に必要な票数が多くなるため,男女とも政党の候補者として議席を争う可能性が高まる。女性は政党の組織的支援や政党ラベルの効果を享受できるため,候補者としての不利な立場を解消することができ,結果として立候補や当選の可能性が高まると考えられる。これらの議論から,市町村の人口規模の拡大に伴う当選必要票数の増加は,女性候補者や議員の比率を上昇させるという仮説を立てる。仮説検証には1990年後半から2010年にかけての平成の大合併を挟んだ市町村の人口規模の変化を利用する。
著者
上田 路子 山川 香織 松林 哲也
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

計画していた4つの研究計画のうち、17年度は主に「自殺報道が自殺者数に与える影響の解明」及び「経済実験」の準備の二つを行った。<自殺報道が自殺者に与える影響の解明> 著名人の自殺やいじめ自殺に関するメディア報道をきっかけに自殺が社会全体に広がっていく「ウェルテル効果」は各国でその存在が確認されている。しかし、なぜ自殺に関する報道が自殺者数を増やすのかという因果メカニズムはこれまで明らかになっていない。そこで、自殺報道に接したときに一般の人々や自殺リスクの高い人々がどのような反応を示すかを調べることを目的として、2010年から2014年に自殺によって亡くなった著名人の死後ツイッターに投稿されたポストを分析し、その量と内容を検討した。また、量や内容と自殺者数の関係も分析した。分析の結果、自殺報道後にツイッターで反応が大きかった著名人の自殺の場合には、一般の自殺者数が増えることが明らかになった。一方、新聞やテレビなどでは報道数が多かったとしても、ツイッター上で反応が少なかった場合、自殺者の増加を伴わないことも確認した。先行研究は主に新聞報道の量や内容と報道後の自殺者数の関連を調べてきたが、本研究の結果は新聞やテレビなどのメディアにおける報道を分析対象とするだけでは、一般の人の反応を探るには不十分なことを示唆している。なお、この結果は英文学術誌(Social Science and Medicine)に研究論文として発表した。現在はツイッターに投稿された内容の感情分析を行っているところであり、結果は18年度中に論文として発表する予定である。<経済実験> 実験の実施に支障が出るため、詳細は明らかにすることができないが、実験の準備を進めた。18年度中には実験を行う予定にしている。