著者
柴山 由理子
出版者
北ヨーロッパ学会
雑誌
北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.91-103, 2021 (Released:2022-07-03)

フィンランドの農民政党は、国民連合党と社会民主党とともに長年に渡り主要政党の一つに位置付けられている。その創設は、初の普通議会選挙が実施される前年の1906年と、北欧諸国の中でも比較的早いタイミングであった。農民同盟の 創設者サンテリ・アルキオ(Santeri Alkio)は、民族ロマン主義運動、啓蒙思想や進歩主義の思想に影響を受け、独立運動を支持し、議会開設を求める自由主義政党の青年フィンランド人党での活動後に、農民同盟の前身となる地域政党を立ち上げた。中心的なイデオロギーとして、「地方」や「農民」を重視するほか、アルキオは「土地の精神」を掲げ、フィンランド人のアイデンティティを模索した。ここに、フィンランド語を重視した民族主義運動の流れをくむ愛国主義的側面を見い出すことができる。一方、個人主義や自由主義、特に社会自由主義の思想の影響も強く、中道右派政党の出発点に社会自由主義の思想が埋め込まれていたことが指摘できる。本稿ではアルキオの思想から、フィンランド農民政党の特徴を考察する。

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