著者
Anthony T. Tu
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.91-102, 1997-03-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
36
被引用文献数
1

化学兵器は第一次世界大戦中に誕生し盛んに使われたが,その後大規模にはあまり使われなかった。しかし最近その有用性が再認識され,この古い兵器が再び脚光を浴びるようになった。化学兵器は原料もたやすく手に入り,製造も簡単なため,貧乏国の核爆弾といわれる。オウム真理教のサリンテロ行為で,化学兵器は戦場のみならず,これからは公衆に対してテロリズムに使われる可能性がますます強くなった。本文は化学兵器の生体に対する毒作用と治療が目的であるが,限られた誌面ですべての化学兵器について述べることは不可能なので,神経ガスに重点を置き,他のガスの作用は比較的簡略に述べた。多くの種類の化学兵器があるが,実際に兵器として採用されている数は比較的少ない。アメリカ軍を例にとっても実際に化学兵器として採用され,貯蔵されているのはサリン,タブン,VX,マスタードガス,ルイサイトの5種類のみである。神経ガスは神経伝達に必要なアセチルコリンエステラーゼの作用を阻害する。それに対する薬はいろいろあるが,どの薬もすべての神経ガスに一様に効くわけではない。薬の効果は神経ガスによって異なる。オキシム系の薬(例えばPAM)とアトロピンとの併用は,単独で使うより治療効果が大とみなされている。ジアゼパムは痙攣を防ぐのに効果があり,三者併用はさらによいといわれている。他の毒ガス,例えばマスタードガス,ホスゲン等には特効薬はなく,対症治療が主な方法である。既存の毒ガスのみならず,新しい型の毒ガスにも注意し,その治療法についても検討すべきである。

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その他 サリン タブン、EX、 ルイサイト と続くようだがこれらは関係ない? https://t.co/CpdQvm2pVq 神経ガス 「古い兵器が再び脚光を浴びオウム真理教のサリンテロ行為で,化学兵器は戦場のみならず,これからは公衆に対してテロリズムに使われる可能性がますます強くなった」
日本としてできることは、解毒剤や検査試薬や防護服を事前に大量に供与すること。起こってから送るのでは遅すぎる ☞ 化学兵器の毒作用と治療 https://t.co/GwfI3zhQn4 化学テロリズム対策についての提言-厚労省 https://t.co/sazMXbxkCF 生物・化学兵器への公衆衛生対策-WHO https://t.co/ZZ6HAolyRi
日本救急医学会雑誌1997年「化学兵器の毒作用と治療」Anthony T. Tu 杜祖健 日本警察が上九一色村の土壌からサリン分解物の検出を成功させる切っ掛けを与えた論文と、同教団の中川らがVXガス製造のヒントを得た論文の著者。兵器に関わる研究者の業は深い。 https://t.co/gIic5vltcO
VXガス(ジイソプロピルアミノエチル)  猛毒の神経剤(V剤)の一種である。サリンなどと同様、コリンエステラーゼ阻害剤として作用し、人類が作った化学物質の中で最も毒性の強い物質の一つといわれる。 外観:琥珀色をした油状の液体 融点:-50℃ 沸点:298 ℃ 合成法: QLとS https://t.co/Fl0bmjChPg
↓Table 4.及び Table 5.をご覧ください。  金正男氏があっという間に昏睡に陥ったのが思い出されます
化学兵器の毒作用と治療 https://t.co/7hPo98SBaQ
化学兵器の毒作用と治療 https://t.co/7hPo98SBaQ
催涙ガスの症状がよくわかった。化学兵器の毒作用と治療 Anthony T. Tu https://t.co/dk6BpdxelC

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編集者: Los688
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編集者: Mzaki
2018-07-30 15:27:23 の編集で削除されたか、リンク先が変更された可能性があります。

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