- 著者
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中垣 啓
- 出版者
- 一般社団法人 日本発達心理学会
- 雑誌
- 発達心理学研究 (ISSN:09159029)
- 巻号頁・発行日
- vol.22, no.4, pp.369-380, 2011-12-20 (Released:2017-07-27)
- 被引用文献数
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本論文の目的は,ピアジェの発達段階論の紹介と解説を通して,認知発達において発達段階を設定することの意義と射程とを明らかにすることであった。まず,ピアジェの知能の発達段階は主体の判断,推論を規定する実在的枠組みである知的操作の発達に基づいて設定されたものであり,知的操作は順序性,統合性,全体構造,構造化,均衡化という5つの段階基準を満たす,認知機能の中でも特権的な領域であることを指摘した。次に,形式的操作期の知的新しさがこの時期の知的操作の全体構造から如何に説明されるか,具体的操作期の全体構造から形式的操作期の全体構造が如何に構築されるかを明らかにすることを通して,形式的操作の全体構造がもつ心理的意味を探った。最後に,ピアジェ発達段階論の意義と射程を理解する一助として,発達心理学の古典的問題である発達の連続性・不連続性の問題,最近の認知発達理論の一大潮流である理論説が提起する認知発達の領域固有性・領域普遍性の問題,そしてこの特集号の編集責任者から提起された形式的操作期の一般性・普遍性の問題を議論した。