著者
伊藤 貴昭 垣花 真一郎
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.86-98, 2009-03-30 (Released:2012-02-22)
参考文献数
19
被引用文献数
14 5

説明を生成することが理解を促進することはこれまでの研究でも数多く示されてきた。本研究では, 他者へ向けた説明生成によって, なぜ理解が促されるかを検討するため, 統計学の「散布度」を学習材料として, 大学生を対象に, 実際に対面で説明する群(対面群 : 13名), ビデオを通して説明する群(ビデオ群 : 14名), 上記2群の説明準備に相当する学習のみを行わせる群(統制群 : 14名)を設定し, 学習効果を比較した。その結果, 事後テストにおいて対面群が他の2群を上回っており, 対面で説明することが理解を促すことが示唆された。一方, ビデオ群と統制群には有意差は見られず, 単に説明を生成することのみの効果は見られないことが示された。プロトコル分析の結果, 「意味付与的説明」, またその「繰り返し」の発話頻度と事後テストの成績との間に有意な相関が見られ, 対面群ではビデオ群よりこの種の発話が多く生成されていた。対面群でそれらが生成された箇所に着目すると, これらの少なくとも一部は, 聞き手の頷きの有無や返事などの否定的フィードバックを契機に生成されていることが明らかとなった。本研究の結果は, 他者に説明すると理解が促されるという現象は, 聞き手がいる状況で生じやすい「意味付与的説明」, またそうした発話を繰り返すことに起因することを示唆している。

言及状況

外部データベース (DOI)

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@FUJIKIDaisuke 文章と課題すべてを掲載したものは意外と少ない印象です。Chiの2001年の論文は掲載されていますが,Roscoeとの共著論文では抜粋でした。日本語だと伊藤・垣花論文で掲載されています。参考になるか分かりませんが…。 https://t.co/S2tipla6cB https://t.co/eyDt8ZBmON https://t.co/mgVK6DCkBO
ちなみに、こちらの論文。 伊藤貴昭・垣花真一郎「説明はなぜ話者自身の理解を促すか」(教育心理学研究, 2009) https://t.co/hQHUqv41VJ
「説明はなぜ話者自身の理解を促すのか 聞き手の有無が与える影響」という論文に、学生がビデオを通して説明するのでは、効果が見られなかったとあります。ペアワーク等を授業に組み込む場合は、一人で動画を観るより効果があるのでは? https://t.co/EMoiRfRTIl https://t.co/V3ZvbKauxN
だれかに教えると自分自身も理解が深まるってやつ。 説明するときに相手からフィードバックがある状況だと理解が深まりやすい。 相手の理解度を推測しながら、自分の説明を補足したり、再構成するかららしい。 https://t.co/hOB6c1zYXP

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