- 著者
-
山中 咲耶
吉田 俊和
- 出版者
- 日本グループ・ダイナミックス学会
- 雑誌
- 実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
- 巻号頁・発行日
- vol.53, no.2, pp.141-149, 2014 (Released:2014-03-18)
- 参考文献数
- 19
- 被引用文献数
-
2
本研究では,他者の面前におけるパフォーマンスの抑制メカニズムについて認知的,感情的側面に着目して検討した。本研究で想定したメカニズムは,課題遂行中に目標とする水準を達成できていないと認知することによって,感情体験が上昇する結果,さらなるパフォーマンスの悪化が生じる,というものである。実験の結果,課題遂行時に自己の成績が目標よりも劣っていると認知した遂行者は,認知後の成績が低下し,自己報告による感情得点が高くなった。一方,自己の成績が目標よりも優れていると認知したものは,成績の変化は見られず,感情得点は低下した。以上の結果より,本研究で想定したパフォーマンスの抑制メカニズムは概ね支持された。なお,行動指標と主観的に報告された感情指標の変化傾向が概ね一致した一方で,生理指標は時間推移に沿った変化しか示されなかった。生理指標の変化傾向が,失敗数,感情指標と一致しなかったことより,生理的覚醒が直接的にパフォーマンスを抑制するわけでなく,状況へのネガティブな認知と感情体験の上昇がパフォーマンスに影響する可能性が示唆された。