著者
菊 幸一
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.21-38, 2011-03-20 (Released:2016-09-13)
参考文献数
63
被引用文献数
1

本稿の目的は、スポーツ社会学における歴史社会学の可能性とは何かを明らかにすることである。 そこで、本稿では第1に、社会学における歴史社会学の性格や位置づけの特徴が、近代社会に対する予見的で社会科学的な理論的認識を強化する方向性をもつことを明らかにした。その上で第2に、スポーツ社会学における歴史社会学の特徴も、そのような社会学における歴史社会学の成立に影響され、その範囲でスポーツの近代性を特徴づけるための「中範囲の理論」をスポーツの歴史現象に求める傾向があることを示した。そこでは、具体的にスポーツのプロフェッショナル化や暴力、あるいは伝統の発明や文化の翻訳というテーマが取り上げられている。また、このような歴史社会学的視点は、スポーツ社会学において主要な研究方法となっている量的社会調査の説明においても応用可能性をもつものである。 一方、歴史社会学の対象としての「近代」とそれに基づくスポーツ認識からの問題設定の限界を超えるためには、その歴史認識の限界を指摘しなければならない。本稿では、平野[2005]が述べる、所謂「詩人の追放」をキーワードにしてギリシャ哲学の認識論にまで遡り、グローバル課題に向けた社会学的想像力を生み出す歴史社会学の新たな可能性を模索した。そこでは、従来のメディア・スポーツ研究の射程を超えた、人類史的な観点を含んだメディアとしてのプレイやゲーム、スポーツに対する歴史社会学的研究の重要性と可能性が示唆された。なぜなら、スポーツ社会学における歴史社会学の新たな可能性が、「スポーツ」という対象だからこそ拓かれると考えるからである。

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菊幸一「スポーツ社会学における歴史社会学の可能性」 https://t.co/yYckhKbQpL
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メモ スポーツ社会学における歴史社会学の可能性 https://t.co/RfzQ9j1yH5

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