著者
船木 祝
出版者
人体科学会
雑誌
人体科学 (ISSN:09182489)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.13-23, 2017 (Released:2018-03-01)

私たちは独立した個人としてだけではなく、さまざまな共同体の成員として生活している。私たちの共同体の中には、老い、病、障害、失業、死別などさまざまな困難に遭遇する人たちがいる。とくに一人暮らしの高齢者は、心身面、経済面のそうした困難を複合的に抱えている。一方、現代社会においては、いついかなる運命が押し寄せ、自らも社会的弱者に位置づけられるのではないかという不安、恐怖が蔓延している。そこで本稿は、個人と共同体という観点から、周囲の者は悲嘆に苦しむ人たちに寄り添っていくための姿勢をどのように見出していけばいいのだろうかという問題に取り組む。個人と共同体の問題については、ドイツの二人の現象学の哲学者マックス・シェーラー(Max Scheler)とエディット・シュタイン(Edith Stein)が注目すべき考察を展開している。両者は、近代文明以降個人主義が台頭してきた中、それに危機感を感じ、正面から共同体のあり方の問題に取り組んだ。個人を重視する社会と、共同体の成員であることを重視する社会の狭間にあって、そのバランスをとるための共同体論を目論む。本稿は、「自分との関係」に関するシェーラーの哲学的分析、及び「他者との関係」に関するシュタインの哲学的分析に注目し、そこから悲嘆者に寄り添うための姿勢を私たちが持つための示唆を得ることを目的とする。

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