著者
竹村 和人 向川 均
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.98, no.6, pp.1183-1206, 2020 (Released:2020-12-12)
参考文献数
43
被引用文献数
3 5

アジアジェットに沿った準定常ロスビー波束の伝播に伴う、日本の東海上におけるロスビー波の砕波及び太平洋・日本(Pacific-Japan:PJ)パターンの持続メカニズムを明らかにするため、長期再解析データを用いて、日本の東海上で発生した計44の砕波事例を対象として解析を行った。砕波及びPJパターンの持続日数に基づき分類した、持続事例及び非持続事例(それぞれ7事例ずつ)の合成図を比較した結果、持続事例におけるアジアジェット沿いの波束伝播は、より強くかつ持続することがわかった。また、持続事例における、より強い砕波は、北西太平洋亜熱帯域への高渦位大気の強い侵入を通して、より強いPJパターンの発現をもたらす傾向が示された。さらに、持続事例における日本の東海上の高気圧偏差は鉛直方向に北傾する構造を維持し、対流圏下・中層では、PJパターンに対応して強く張り出す太平洋高気圧の周縁に沿って、暖気移流偏差の強化がみられた。Qベクトルを用いた診断や偏相関解析より、対流圏中層における強い暖気移流は、日本~その東海上における断熱過程に伴う力学的上昇流の誘起と密接に関連することが示された。一方、北西太平洋亜熱帯域より太平洋高気圧の周縁に沿って流入する水蒸気は、日本~その東海上における水蒸気フラックスの収束偏差を強化し、非断熱過程に伴う上昇流偏差をもたらすことがわかった。相関解析より、これらの断熱及び非断熱過程と上昇流偏差との関連性は、ほぼ同程度と見積もられた。持続事例における強い上昇流偏差は、対流圏上層における渦管収縮に伴う負の渦度変化傾向を通して、砕波及びそれに関連したPJパターンの強化及び持続に寄与するとみられる。

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