著者
滝沢 龍 笠井 清登 福田 正人
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.41-46, 2012 (Released:2017-02-16)
参考文献数
34

現在の臨床精神医学の克服すべき点の1つに,診断と治療に役立つ生物学的指標を探索・確立することがある。今回は,発達(個体発生)や進化(系統発生)の視点から,生物学的精神医学において必要な脳研究の方向性に示唆が得られないか探ることをテーマとした。人間の脳の発達・成熟のスピードは部位によって異なり,より高次の機能を担う部位では遅く始まると想定されている。思春期には,前頭前野のダイナミックな再構成が起こり,この時期の発達変化の異常が統合失調症などの精神疾患の発症と関連している可能性も指摘されている。進化の視点からは,前頭前野の中でも前頭極や言語機能に関連する脳部位が人間独特の精神機能と関連するとして注目が集まってきている。進化論により注目される脳部位と,それに関連する最も高次な認知機能への理解が進むことは,人間独特の精神機能や,その障害としての精神疾患への鍵となる見識をもたらすことが期待される。

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