著者
稲川 雄太 野口 啓 秋山 美奈子 下村 浩祐 吉本 宏 竹下 浩二 惠木 康壮 保坂 茂
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.643-649, 2019 (Released:2019-11-28)
参考文献数
18

症例は76歳の男性. IgA腎症による末期腎不全で64歳時に透析導入した. 維持血液透析中に腰痛と発熱が出現し, 炎症反応高値であることから抗生物質投与のうえ入院となった. 熱源精査目的の腰椎MRIで大動脈腎動脈分岐部から総腸骨動脈分岐レベルでT2延長域を認め, 造影CTでは大動脈周囲に境界不明瞭な組織濃度上昇が認められた. 画像上血管自体の変化に乏しいため大動脈周囲炎を第一に考えた. 一方, 感染性動脈炎も否定できないためステロイド投与は直ちに行わず抗生物質投与を続行したところ, 血液検査や画像上炎症所見の改善が得られたが, 左腎動脈分岐部に動脈瘤が出現し急速に増大した. 破裂の危険に対しステント留置術を施行した. 経過から感染性大動脈炎に伴う腹部大動脈瘤すなわち感染性動脈瘤であると診断した. 今回, 治療法の異なる大動脈周囲炎と感染性大動脈炎の鑑別に難渋し, 感染性大動脈炎から瘤への形成過程を観察し得た貴重な症例を経験したので報告する.

言及状況

外部データベース (DOI)

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HD患者では原因不明の発熱に遭遇する機会が多いです。鑑別疾患のうち、稀で重篤化しやすい病気として、「感染性大動脈瘤」があります。 血液培養の検出率は50〜70%と低く、保存的治療では「破裂が不可避」とされており、疑った場合は造影CTなどの積極的な検査が必要です。 https://t.co/IHhS6vHbVw https://t.co/grysb4Ms9D

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