著者
山田 富秋
出版者
日本保健医療社会学会
雑誌
保健医療社会学論集 (ISSN:13430203)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.8-11, 2017-01-31 (Released:2018-07-31)
参考文献数
4

「問題経験のナラティヴをきく」をメインテーマとした今大会シンポジウムでは、薬害被害当事者の経験の語りとして、特にサリドマイド事件と薬害エイズ事件を取り上げた。本稿は花井十伍氏の教育講演「薬害エイズの教訓から考える」の提起した「人権の問題」の視点から、このシンポジウム全体の意義を捉え直した。薬害のナラティヴの共有と継承にとって重要なことは、メディアによって単純化された薬害被害者の語りを、適切な社会的・歴史的文脈に位置づけ直すことによって、個々の被害当事者の多様な経験を回復することにある。さらにまた、薬害被害者の語りが証言することは、人権という概念が発効する以前の、生存そのものが脅かされる過酷な事態である。問題経験のナラティヴをきくことを通して、被害当事者の語りを断片的にではなく、トータルな時間的流れとして理解できるようになり、それは人権の問題として薬害被害を捉える時に不可欠なものとなる。

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山田富秋、2017、〈薬害〉のナラティヴ──その共有と継承 https://t.co/8j9Fq4igFw

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