著者
直井 道子
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.191-203,266, 1986-09-30 (Released:2009-11-11)
参考文献数
8
被引用文献数
2

フロムやアドルノによる権威主義的性格の研究は、戦後日本にとって重要な問題提起であった。とくに、家族の権威構造と権威主義的性格の関連性というテーマは、川島武宜の問題提起以来注目を集めたが、実証研究はほとんど発展してこなかった。本稿は、このテーマに関連して、夫の親と同居する主婦 (直系家族における、いわゆる嫁) が、別居している主婦より、より権威主義的か否か、をデータ分析によって追究したものである。夫の親と同居する主婦は、別居している主婦より平均的に有意に権威主義的であることがデータから立証された。さらに、その差は、同居の主婦と別居の主婦の年齢の差によるものではないことも確認された。最後に、一五歳時の居住地、夫の学歴、夫の職業、妻の学歴、ライフ・サイクル等の説明変数をコントロールしても、なお、夫の親との同居は主婦をより権威主義的たらしめる方向に対して直接効果をもつことが、パス解析によって立証された。夫の親との同居は、主婦の権威主義的性格の維持あるいは再生産に対して一定の機能を果していると結論できる。

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