著者
直井 道子
出版者
東京都立大学都市研究センター
雑誌
総合都市研究 (ISSN:03863506)
巻号頁・発行日
no.39, pp.p149-159, 1990-03
被引用文献数
2

子供との同居や子供との交流は高齢者の幸福にとって必須の条件であろうか。本稿ではP.G.C.モラール尺度を用いて,幸福感の規定要因を探った。分散分析では,子供との同別居,子供の有無,子供との交流によってモラール得点に有意差はみられず,配偶者の有無,世帯収入,健康度,男性ではこれに加え,別居子と会う頻度,就業の有無,友人との電話頻度でのみ有意差がみられた。基本属性と家族構成,親族交際頻度,友人交際頻度を説明変数として男女別に重回帰分析を行ったところ,男女とも健康度が重要であるほか,男性では友人との交際,女性では世帯収入と親族との交際がモラールに有意な影響をもつといえる。
著者
直井 道子
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.191-203,266, 1986-09-30 (Released:2009-11-11)
参考文献数
8
被引用文献数
2

フロムやアドルノによる権威主義的性格の研究は、戦後日本にとって重要な問題提起であった。とくに、家族の権威構造と権威主義的性格の関連性というテーマは、川島武宜の問題提起以来注目を集めたが、実証研究はほとんど発展してこなかった。本稿は、このテーマに関連して、夫の親と同居する主婦 (直系家族における、いわゆる嫁) が、別居している主婦より、より権威主義的か否か、をデータ分析によって追究したものである。夫の親と同居する主婦は、別居している主婦より平均的に有意に権威主義的であることがデータから立証された。さらに、その差は、同居の主婦と別居の主婦の年齢の差によるものではないことも確認された。最後に、一五歳時の居住地、夫の学歴、夫の職業、妻の学歴、ライフ・サイクル等の説明変数をコントロールしても、なお、夫の親との同居は主婦をより権威主義的たらしめる方向に対して直接効果をもつことが、パス解析によって立証された。夫の親との同居は、主婦の権威主義的性格の維持あるいは再生産に対して一定の機能を果していると結論できる。
著者
村松 泰子 大竹 美登利 直井 道子 福富 護 佐久間 亜紀 中澤 智恵 谷部 弘子 福元 真由美
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

ジェンダーの視点からの教員養成のあり方の検討に向け、現状と問題点の把握のため、教員養成系8大学の教員・学生両者を対象に実証的研究を行った。初年次に教員に対する質問紙調査(回答703名)、2年次に学生に対する質問紙調査(回答1209名)を実施、最終年次に両調査の結果を合わせ分析し報告書を作成した。調査内容は、教職観、大学教員の教育活動・学生観、学生の学習活動・大学教員観、教師-学生関係、ジェンダー観などである。結果の一部は、下記の通りである。1)大学教員の7割以上が小学校教師は、経済的に安定・大学院レベルの知識が必要としているが、女性教員の過半は女性向きとし、男性教員の過半はそう思っていない。2)多くの大学教員は、学生の学力・まじめさ・積極性・批判精神・将来性には性別による偏りはないと見ているが、批判精神と将来性は女性のほうが女子学生を高く評価している。3)学生は男女とも、男性教員に「専門的知識の深い人が多い」、女性教員に「まじめな人」「やさしい人が多い」というイメージをもつものが多い。4)一般的なジェンダー観に関して、大学教員では「能力や適性は男女で異なる」に男性の過半数は同意、女性の過半数は不同意など、性別による差が大きい。学生も性別により差が見られる。学生の多くが「男女の違いを認めあうことが大切」としているが、「義務教育でもっと男らしさや女らしさを大切に」教育することには多くが否定的である。5)義務教育段階での教師と児童生徒の関係について「毅然とした態度を取るべき」などの権威的な考え方は、女性より男性教員のほうがやや強く、ジェンダーバイアスが強い教員ほど強かった。学生でも、管理主義的な考え方が男子学生のほうにより強かった。以上の通り、大学教員では、ジェンダーに関わる態度や意識が性別により異なる面があり、学生では男女ともに、意識としては男女平等を志向しながらも、すでにジェンダーを内面化している傾向がうかがえた。
著者
森岡 清志 大谷 信介 松本 康 園部 雅久 金子 勇 直井 道子 中尾 啓子
出版者
東京都立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1994

本研究の目的は、第一に都市度とパーソナルネットワークの関連を都市間比較を通して明らかにすること、第二に、都市度の他に、階層性、家族的特性などのパーソナルネットワークへの効果も明らかにすること、第三に、「それほど親しくない人びと」とのネットワークを年賀状調査を中心とする事例分析をもとに捉え、機関や集団の存在を明らかにしながら、パーソナルネットワークと都市社会構造との連結点を具体的に把握することの三点である。第一と第二の研究目的に従って、平成6年度と平成7年度には、仮説の検討、調査票の作製、全国7地区における実査、調査票の点検、エラーチェックなどをおこなった。調査地は東京都文京区、調布市、福岡市中央区、西区、新潟市、富士市、松江市であり、各地点300サンプルを選挙人名簿から抽出した。回収率は全体で約48%であった。詳細は報告書第2章に記載されている。また、この調査結果の解析と知見については報告書の第3章〜第11章にまとめられている。平成8年度は、上記調査の集計分析の他、第三の研究目的を達成するべく年賀状調査を実施した。現在この事例分析の知見を整理・検討しているところである。調査票にもとづく大規模調査の結果は、都市度と友人ネットワークとに先行研究で示されたようなストレートな相関を見出しえないものとなった。都市度の高低は、遠距離に居住する友人数の大小と有意な相関を示し、むしろ親族ネットワークと都市度との間に興味深い関連が見出されるものとなった。このような結果の差異は、親しい親族数、友人数の聴き方のちがいによっても生じたものと思われる。