- 著者
-
門田 淳一
- 出版者
- 一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
- 雑誌
- 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
- 巻号頁・発行日
- vol.22, no.3, pp.284-287, 2012-12-28 (Released:2016-04-25)
- 参考文献数
- 18
2011年わが国において策定された医療・介護関連肺炎(NHCAP)診療ガイドラインでは高齢者医療の倫理的側面を含んだ治療区分という分類が導入され,抗菌薬を選択する際の基準となっている.しかし,本ガイドラインの基になった米国の医療ケア関連肺炎において「耐性菌のリスクを有するので広域抗菌薬で治療する」ことと生命予後とは関連しないことが示され,わが国においてもNHCAPを含む高齢者肺炎の予後不良因子は誤嚥性肺炎であり,抗菌薬による治療の失敗とは関連がないことが明らかとなった.すなわちこれらのガイドラインに沿った抗菌薬療法が予後改善に直結するかどうかは疑問であり,特にわが国の超高齢社会においては予防を含めた包括的な戦略が重要である.今後はNHCAP・誤嚥性肺炎に対する抗菌薬療法や胃瘻を含めた経管栄養の是非などについて,終末期医療としての側面を考えながらわが国独自のエビデンスを構築する必要がある.