著者
倉石 一郎
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.150-161, 2018-06-30 (Released:2018-10-17)

いわゆる「教育機会確保法」が2016年12月に国会で可決・成立した。周知のように立法化の発端は制度上の地位安定を求めるフリースクール関係者からの働きかけであり、そこに夜間中学関係者の運動も合流した。公教育システムの周縁部から、公教育総体のあり方を問い揺さぶるような議論が提起された今回の経緯は非常に興味深いものである。他方で最終的に成立した法文は初期の構想と大きく隔たっており、一連の動きに関わってきた関係者から強い批判も聞かれる。本稿ではその中でも、当初「多様な教育機会確保」と言われたものから、文言上も実質的にも「多様」というコンセプトが失われた点に注目する。本稿ではこの改変(消失)過程をD・ラバリーの議論を手がかりに、教育の実質主義に対する形式主義の優越、公教育を私有財とみなす教育消費者の立場の「勝利」であるとする解釈を提示する。

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教育機会確保法が「登校復帰促進法」でしかないという手厳しい批判 「居場所」についても同様に、公共財としての居場所(目的でない各々が好きに過ごせる)と、社会上昇のための手段としての居場所のレイヤーがありそう https://t.co/42TJ6BoJmd
興味深い論文を見つけてしまった。倉石一郎先生。 "教育消費者を鍛え育成するという課題を、日本の教育界はいまだ一度も真剣に考えたことがないのではなかろうか" "「教育機会確保」から「多様な」が消えたことの意味―形式主義と教育消費者の勝利という視角からの解釈―" https://t.co/9GyZ7459Eq
これもおもしろそう。「『教育機会確保』から『多様な』が消えたことの意味-形式主義と教育消費者の勝利という視角からの解釈-」 https://t.co/9TjaYe28lu

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