- 著者
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池谷 知明
- 出版者
- 日本政治学会
- 雑誌
- 年報政治学 (ISSN:05494192)
- 巻号頁・発行日
- vol.66, no.2, pp.2_59-2_79, 2015 (Released:2018-12-15)
- 参考文献数
- 34
- 被引用文献数
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イタリアの共和体制は政党によってつくられた。「政党の共和国」, 政党支配体制といった表現に示されるように, 政党は政治の中心に位置していた。1990年代半ばの選挙制度の変更と政党の交代によって第2共和制に移行したと言われるが, そこで現出したのは「政党の第2共和国」ではなく第1共和制において政党の陰に隠れていた大統領であり, 第2共和制は「大統領の共和国」と称されたりもする。第2共和制において左右の2極化と政権交代は実現したが, 安定した政党システムは確立されなかった。左右の対決政治が先鋭化したことによって, また, 多数決型政治と合意形成型制度の齟齬の中で大統領は政治過程に積極的に関与するようになった。公式の権限に加え, チャンピ, ナポリターノの二人の大統領は, 非公式の権限としてのコミュニケーション・パワーを行使し, その存在感を高め, 世論の支持を受けた。不安定な政治状況の下で, 大統領は「国の統一を代表する」 (憲法第87条1項) 役割を果たしている。