- 著者
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川本 茉莉
- 出版者
- 公益財団法人 NIRA総合研究開発機構
- 雑誌
- NIRAワーキングペーパー (ISSN:27582183)
- 巻号頁・発行日
- vol.4, pp.1-24, 2022-04-26 (Released:2022-10-19)
政策に関心を持つ人々の意見を集約し、それを踏まえた政策ビジョンを構築するため、NIRA総研では、経済・社会に関する4つのテーマについての調査を実施した。本稿では、そのうちの1つである「財政赤字と国債発行」に関して報告する。今回の調査では、財政赤字について心配ないと考えているのか、それとも危機的水準だと考えているのか、その理由と共にたずねた。またこの議題に関する専門家の論考を読み、その論考のうちどの論点を参考に、人々の考えがどのように変化するかを検証した。調査の結果、政府債務に対し危機意識を持っている人は少なくないが、それは反対の立場の意見を読むことにより揺らぎやすいものであることが分かった。また財政赤字に対する考え方により、専門家の論考のうち参考とする論点が異なっており、財政赤字を心配していない人は財政赤字を楽観視する論点を、危機的と感じている人は財政規律を重視する論点を選んでいる。自由記述回答の内容からは、専門家の論考が人々の考えに影響を与えており、専門家の論考を読み考える熟慮に一定の効果があることが分かった。