著者
高野 博幸 鈴木 忠直 梅田 圭司
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.21, no.10, pp.483-489, 1974-10-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
10
被引用文献数
2 2

発芽抑制を目的に放射線処理をした北海道産馬鈴薯“農林1号”の長期貯蔵中における還元糖とアミノ酸含量の変化を調べ,さらにポテトチップス製造試験を行ないその影響を調べた。(1) 10Krad照射後,常温に10ヵ月間貯蔵しても,生イモの還元糖量は0.4%以下であった。一方非照射試料は貯蔵後6ヵ月目から急激に発芽し始め,2ヵ月目以降は加工用に用いられなくなった。(2) 照射後5℃に貯蔵すると還元糖は,常温貯蔵区のものより2~3倍多くなるが,これを常温に2週間移すことによって常温貯蔵区のものと同程度にまで減少させることができる。(3) 10Krad照射で増減するアミノ酸もあったが,アミノ酸パターンの類似率でみると,照射による影響はほとんどなかった。貯蔵中のアミノ酸の変化をパターン類似率からみると,照射または貯蔵温度による差はほとんどなく,貯蔵期間の影響が大きく,長期貯蔵によってパターンは変化していた。(4) 貯蔵後6, 8および10ヵ月目にポテトチップスを製造し品質を調べた。官能検査の総合評価では5℃貯蔵から室温に2週間移した後製造したものが最もすぐれていた。照射後常温貯蔵した試料は,照射後8ヵ月目まではポテトチップスの品質はよかったが,10ヵ月目以降のものの品質は著しく低下した。(5) 生イモの還元糖含量が低いと,色の白いポテトチップスができるが,チップスの品質を考えると必ずしも還元糖含量だけに起因しているのでない。還元糖含量が低くても,発芽あるいは水分蒸散によって萎縮し表面にシワが多くみられる馬鈴薯から作ったチップスの品質は,他の試料よりも劣っていた。(6) 以上の結果から,照射馬鈴薯を常温に長時間貯蔵しても還元糖量は増加せず,8ヵ月間は加工原料として十分利用できる。8ヵ月以降に加工原料として用いる場合は,水分蒸散による萎縮を防止するため5℃に貯蔵し,加工する2週間前に常温に移し還元糖含量を低下させる必要がある。アミノ酸含量は,照射あるいは貯蔵温度による影響よりも貯蔵期間による影響の方が大きかった。しかしアミノ酸は,二次加工製品の品質に対しては影響を及ぼしていないと思われた。

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