著者
法邑 雄司 鈴木 忠直 小阪 英樹 堀田 博 安井 明美
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.619-626, 2006-12-15
参考文献数
11
被引用文献数
9 12

丹波黒の無機元素組成による産地判別モデルを構築し,丹波黒一粒による産地判別の可能性について検討を行った.<BR>国産,中国産計66点の丹波黒について,約100粒をマイクロ波試料分解装置により酸分解し,ICP-AES法及びICP-MS法により計24元素測定した.後進ステップワイズ法により選択した6元素(Ba, Ca, Mn, Nd, W, Ni)とKの濃度比により,全試料66点について国産,中国産を正しく分類する線形判別モデルを構築した.<BR>モデルの構築に用いた試料65点,及び新たに収集した試料32点の計97点からそれぞれ一粒ずつ取り出し,同様に各元素とKとの濃度比を求めた.6元素とKとの濃度比を,構築した判別モデルに代入したところ,約84%(97点中81点)が適中した.さらに,ICP-MS測定の15元素から選択した3元素(Cd, Cs, V)とKとの濃度比により線形判別モデルを構築し,一粒による産地判別について検討したところ,約94%(97点中91点)を適中し,判別精度の向上を図ることができた.
著者
高野 博幸 鈴木 忠直 梅田 圭司
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.21, no.10, pp.483-489, 1974-10-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
10
被引用文献数
2 2

発芽抑制を目的に放射線処理をした北海道産馬鈴薯“農林1号”の長期貯蔵中における還元糖とアミノ酸含量の変化を調べ,さらにポテトチップス製造試験を行ないその影響を調べた。(1) 10Krad照射後,常温に10ヵ月間貯蔵しても,生イモの還元糖量は0.4%以下であった。一方非照射試料は貯蔵後6ヵ月目から急激に発芽し始め,2ヵ月目以降は加工用に用いられなくなった。(2) 照射後5℃に貯蔵すると還元糖は,常温貯蔵区のものより2~3倍多くなるが,これを常温に2週間移すことによって常温貯蔵区のものと同程度にまで減少させることができる。(3) 10Krad照射で増減するアミノ酸もあったが,アミノ酸パターンの類似率でみると,照射による影響はほとんどなかった。貯蔵中のアミノ酸の変化をパターン類似率からみると,照射または貯蔵温度による差はほとんどなく,貯蔵期間の影響が大きく,長期貯蔵によってパターンは変化していた。(4) 貯蔵後6, 8および10ヵ月目にポテトチップスを製造し品質を調べた。官能検査の総合評価では5℃貯蔵から室温に2週間移した後製造したものが最もすぐれていた。照射後常温貯蔵した試料は,照射後8ヵ月目まではポテトチップスの品質はよかったが,10ヵ月目以降のものの品質は著しく低下した。(5) 生イモの還元糖含量が低いと,色の白いポテトチップスができるが,チップスの品質を考えると必ずしも還元糖含量だけに起因しているのでない。還元糖含量が低くても,発芽あるいは水分蒸散によって萎縮し表面にシワが多くみられる馬鈴薯から作ったチップスの品質は,他の試料よりも劣っていた。(6) 以上の結果から,照射馬鈴薯を常温に長時間貯蔵しても還元糖量は増加せず,8ヵ月間は加工原料として十分利用できる。8ヵ月以降に加工原料として用いる場合は,水分蒸散による萎縮を防止するため5℃に貯蔵し,加工する2週間前に常温に移し還元糖含量を低下させる必要がある。アミノ酸含量は,照射あるいは貯蔵温度による影響よりも貯蔵期間による影響の方が大きかった。しかしアミノ酸は,二次加工製品の品質に対しては影響を及ぼしていないと思われた。
著者
野澤 慎太郎 笠間 裕貴 鈴木 忠直 安井 明美
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.179-183, 2007-03-05
被引用文献数
6

改良デュマ法によるしょうゆの全窒素分定量法を検討した.11種類のしょうゆを試料として,その0.5gを石英ボートに量り取り,高純度酸素を助燃ガスとして870℃で燃焼して生成したNO_xの酸素を銅還元管で除去し,熱伝導度検出器で検出してそのピーク面積を求めた.まず,全窒素分を2.000%に調製したリジン水溶液を分析した結果,2.002%であり,理論値とほぼ一致した値が得られた.また,改良デュマ法と酸分解条件を最適化したケルダール法との室内再現性を一元配置分散分析で検証した結果,各法で1試料に有意差が認められたが,これらの日間及び日内変動はHorwitz式から求めた併行相対標準偏差より低く,実質的な日間差はないと判断した.更に,Welchのt検定により両法の測定結果の差の有意差を確認した結果,11試料中6試料について有意差が認められたが,それらの平均値の差がHorwitz式から求めたケルダール法での併行許容差内であり,実質的な有意差はないと判断した.改良デュマ法はケルダール法より併行精度が高く,両分析法の相関性もR^2=0.9999であった.以上の結果から,改良デュマ法はしょうゆの全窒素測定に適用可能であることを確認した.
著者
法邑 雄司 鈴木 忠直 條 照雄 安井 明美
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.36-40, 2005-03-05
被引用文献数
5 2

産地の明らかな日本産10点, 中国産5点の黒大豆「丹波黒(新丹波黒の突然変異種1点を含む)」計15点の種子をマイクロ波試料分解装置により酸分解し, 1%硝酸により試料溶液を調製したのち, 誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS法)によって9元素(Al, Mn, Ni, Cu, Zn, Sr, Ba, Rb, Cs)を定量した.日本産, 中国産の産地の違いを反映し, 濃度に有意差があった7元素(Al, Ni, Cu, Sr, Ba, Rb, Cs)の含量組成を階層型クラスター分析(Ward法)及び主成分分析で解析した結果, 日本産と中国産が良く分離し, 無機元素組成の差異によって「丹波黒」の産地表示の信憑性を検証できることが示唆された.
著者
野澤 慎太郎 笠間 裕貴 鈴木 忠直 安井 明美
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.179-183, 2007 (Released:2007-07-25)
参考文献数
8
被引用文献数
4 6

改良デュマ法によるしょうゆの全窒素分定量法を検討した.11種類のしょうゆを試料として,その0.5 gを石英ボートに量り取り,高純度酸素を助燃ガスとして870℃で燃焼して生成したNOxの酸素を銅還元管で除去し,熱伝導度検出器で検出してそのピーク面積を求めた.まず,全窒素分を2.000% に調製したリジン水溶液を分析した結果,2.002% であり,理論値とほぼ一致した値が得られた.また,改良デュマ法と酸分解条件を最適化したケルダール法との室内再現性を一元配置分散分析で検証した結果,各法で1試料に有意差が認められたが,これらの日間及び日内変動はHorwitz式から求めた併行相対標準偏差より低く,実質的な日間差はないと判断した.更に,Welchのt検定により両法の測定結果の差の有意差を確認した結果,11試料中6試料について有意差が認められたが,それらの平均値の差がHorwitz式から求めたケルダール法での併行許容差内であり,実質的な有意差はないと判断した.改良デュマ法はケルダール法より併行精度が高く,両分析法の相関性もR2 = 0.9999であった.以上の結果から,改良デュマ法はしょうゆの全窒素測定に適用可能であることを確認した.