著者
高野 博幸 青木 章平 梅田 圭司 佐藤 友太郎
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.273-279, 1974-06-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
8
被引用文献数
1

“札幌黄”の最適照射期間の延長と,照射タマネギの貯蔵中の内芽の褐変防止について検討した。(1) 収穫したタマネギは約2週間の乾燥後照射処理を行なうのが普通である。しかし,この乾燥前または乾燥途中に照射しても,その後設定の乾燥を行なったのち貯蔵するなら,発芽抑制効果および貯蔵後の品質は常法で処理したものと差はない。(2) 収穫後常温貯蔵しておき,2カ月以上経過したものは放射線による発芽抑制効果は低下し,3カ月以上経過するとまったく効果は認められなくなる。これは内芽の伸長度と関達しており,内芽の伸長が2~3cmまでなら発芽抑制効果はあるが,それ以上になると効果は低下し,5~6cm以上になると照射によって発芽を抑えることが不可能になる。(3) 内芽の伸長は収穫後の低温貯蔵(3~5℃)によって抑制することができ,このような条件下では,収穫後3カ月までは3~7kradの照射で十分その後の発芽を抑制することができる。つまり照射前の低温貯蔵で,放射線処理の操業期間を少なくても3カ月以上に延長させることができる。(4) 照射タマネギの唯一の欠点は,実用的には問題ないとはいえ貯蔵中に内芽が枯死し褐変することである,内芽の褐変化を防止するには3~5℃の低温貯蔵をすることで,少なくとも8カ月は変色しない,またこのものを出庫しても常温で1カ月ぐらいの流通期間ならば,内芽には何ら変化はなく,商品価値を維持できる。
著者
川嶋 浩二 田中 芳一 梅田 圭司
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.21, no.12, pp.592-596, 1974-12-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
8

(1) 市販プロテアーゼ製剤9種に,殺菌線量(0.75~1Mradで芽胞菌を103~104減少させる)の放射線照射(氷水中,線量率約0.9~0.95Mrad/hr)を行なった。その結果酵素の保持活性は,もとの95%以上のもの7種,約93%のもの,および約80%のもの各1種であった。この結果,プロテアーゼ製剤の放射線殺菌は十分可能であると考えられた。(2) 照射時の酵素の水分量が,酵素の放射線感受性に影響することはなかった。(3) 数種のプロテアーゼで放射線照射により,最高4~60%の活性増加が見られた。その時の線量はいずれも250Krad付近にあった。(4) 照射酵素の熱安定性は未照射のものと差はなかった。(5) 照射酵素で5℃に2ヵ月間貯蔵中に酵素活性のやや回復するものがみられた。
著者
梅田 圭司 高野 博幸 佐藤 友太郎
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.16, no.11, pp.508-514, 1969-11-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
4
被引用文献数
2 4

コバルト60・ガンマ線照射によるジャガイモの発芽防止効果について,“島原”および“男爵”を用いて照射時期と発芽率,重量減などを調べた。(1) “男爵”と“島原”では休眠期間が異なり,収穫後の貯蔵条件によって多少の変動はあるが,前者は約100日,後者は約45日ぐらいである。この休眠期間に照射するなら7Kradで両品種とも効果的に発芽を抑制することができる。ただし発芽直前のものは,7Kradでは完全に発芽を抑制することはできず,長期貯蔵中に芽を出すが,これもほとんど伸長しないので実際面では問題にならない。また15Krad以上ではほぼ完全に発芽を抑制する。(2) “男爵”“島原”ともに休眠期を過ぎて若干発芽し始めたものでも,7Kradで発芽した芽の伸長を押え,かつ新しい発芽を抑制できる。発芽した“男爵”の芽の長さが0.5~1.0cm程度あるものでも,7Kradで効果的にその芽の伸長および新しい発芽を押えることができる。15Kradでは一層強く,とくに新しい発芽を抑制するが,実用化を考えた場合7Kradと15Kradの間にそれほど大きな差はない。また0.5~1.0cm発芽した芽は,7~15Kradの照射で,芽の部分のみが腐敗するが,これはジャガイモ本体に悪影響を与えるものではない。(3) 照射後の貯蔵温度は1℃は低温障害を起すために不適当である。5℃貯蔵は重量減,発芽率の点で室温貯蔵よりもよい結果を与えているが,冷蔵コストを考慮に入れると実用化に際しては室温貯蔵で十分目的を達せられる。(4) このほか照射時期による重量減少率の変化,貯蔵温度による腐敗率の変化,テキストロメーターによる物性の変化,官能検査などを調べたが,いずれも照射による影響,線量間の差異は問題にならない程度である。以上の結果より,“男爵”“島原”の実用化に即した発芽抑制のためには,目的とする貯蔵期間を収穫後8ヵ月と設定して,休眠期間中または若干の発芽(0.5~1.0cm程度)状態までに照射するなら,7~15Kradの照射で十分目的を達することができる。以上の結果より,“男爵”“島原”の実用化に即した発芽抑制のためには,目的とする貯蔵期間を収穫後8ヵ月と設定して,休眠期間中または若干の発芽(0.5~1.0cm程度)状態までに照射するなら,7~15Kradの照射で十分目的を達することができる。
著者
梅田 圭司 川嶋 浩二 佐藤 友太郎 伊庭 慶昭 西浦 昌男
出版者
日本食品照射研究協議会
雑誌
食品照射 (ISSN:03871975)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.91-100, 1969-06-30 (Released:2011-07-04)
参考文献数
11
被引用文献数
3 2

(1)緑かびの胞子をミカンの果皮に接種して, 5℃に貯蔵後,1MeVの電子線で処理すると, 電子線照射前の貯蔵期間が長いほど殺菌効果は小さくなる。(2)電子線照射線量が高くなると,果皮の軟化,油胞陥没が起こり, これに伴い褐色の斑点が発生し果皮の褐変化が起きる。この油胞陥没から褐変までの現象は, 収穫から照射処理までの経過時間が短いほど発生しやすい。(3)電子線照射による軟化→油胞陥没→褐変といった果皮の放射線障害は照射後の常温貯蔵によって促進され, 3~5℃の低温貯蔵で抑制される。また電子線処理前のキュアリング(予措)は放射線障害の発生に抑制効果はない。(4)ミカン果皮の表面殺菌に, 0.5MeVの電子線は,1MeVの電子線と同様な殺菌効果を示し, 0.5~1.0MeVのエネルギーでは差がなかった。1MeVの電子線と60Coのγ 線を比較すると, 殺菌効果は同程度であるが, γ線処理では50Kradの低線量でオフフレーバーが発生し,電子線では250Kradまで外観,食味はなんら悪影響を与えない。(5)長期貯蔵後の電子線処理ミカンの成分と, 未照射試料との間に差はなかった。また貯蔵後の官能検査では, 照射処理によってフレーバーが劣化した例はなく, 逆に100~300Kradでは未照射区よりも高いスコアーを示した。
著者
高野 博幸 鈴木 忠直 梅田 圭司
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.21, no.10, pp.483-489, 1974-10-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
10
被引用文献数
2 2

発芽抑制を目的に放射線処理をした北海道産馬鈴薯“農林1号”の長期貯蔵中における還元糖とアミノ酸含量の変化を調べ,さらにポテトチップス製造試験を行ないその影響を調べた。(1) 10Krad照射後,常温に10ヵ月間貯蔵しても,生イモの還元糖量は0.4%以下であった。一方非照射試料は貯蔵後6ヵ月目から急激に発芽し始め,2ヵ月目以降は加工用に用いられなくなった。(2) 照射後5℃に貯蔵すると還元糖は,常温貯蔵区のものより2~3倍多くなるが,これを常温に2週間移すことによって常温貯蔵区のものと同程度にまで減少させることができる。(3) 10Krad照射で増減するアミノ酸もあったが,アミノ酸パターンの類似率でみると,照射による影響はほとんどなかった。貯蔵中のアミノ酸の変化をパターン類似率からみると,照射または貯蔵温度による差はほとんどなく,貯蔵期間の影響が大きく,長期貯蔵によってパターンは変化していた。(4) 貯蔵後6, 8および10ヵ月目にポテトチップスを製造し品質を調べた。官能検査の総合評価では5℃貯蔵から室温に2週間移した後製造したものが最もすぐれていた。照射後常温貯蔵した試料は,照射後8ヵ月目まではポテトチップスの品質はよかったが,10ヵ月目以降のものの品質は著しく低下した。(5) 生イモの還元糖含量が低いと,色の白いポテトチップスができるが,チップスの品質を考えると必ずしも還元糖含量だけに起因しているのでない。還元糖含量が低くても,発芽あるいは水分蒸散によって萎縮し表面にシワが多くみられる馬鈴薯から作ったチップスの品質は,他の試料よりも劣っていた。(6) 以上の結果から,照射馬鈴薯を常温に長時間貯蔵しても還元糖量は増加せず,8ヵ月間は加工原料として十分利用できる。8ヵ月以降に加工原料として用いる場合は,水分蒸散による萎縮を防止するため5℃に貯蔵し,加工する2週間前に常温に移し還元糖含量を低下させる必要がある。アミノ酸含量は,照射あるいは貯蔵温度による影響よりも貯蔵期間による影響の方が大きかった。しかしアミノ酸は,二次加工製品の品質に対しては影響を及ぼしていないと思われた。
著者
石谷 孝佑 梅田 圭司 木村 進
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.23, no.10, pp.480-485, 1976-10-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
10
被引用文献数
2 1

リコピンとβ-カロチンを用い,光分解に関与する光の波長について検討した。(1) n-ヘキサン溶液では, 225~350nmの紫外線で著しく色素の分解が促進され, 500nm以上の可視光線ではほとんど分解が見られなかった。リコピンは, β-カロチンに比べ数倍不安定であった。(2) リコピンの微結晶は,紫外線で著しく退色したのと同時に, 500nmまでの可視光線でも比較的分解が促進された。濾紙に吸着した状態のリコピンは,水に懸濁した状態と比較し,非常に不安定であった。
著者
渡辺 敦夫 太田 義雄 木村 尚史 梅田 圭司 木村 進
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.260-265, 1979-06-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
16
被引用文献数
4 11

温州ミカン果汁を逆浸透法により濃縮する間に生ずる膜面付着物について分析を行ない,付着成分は主として,ペクチンおよびセルロースようの不溶性成分であることを確認した。そこで,ペクチンおよびセルロースからなるモデル液を使用し,付着層による水透過に対する抵抗の成長速度について検討を加えた。セルロース懸濁液では水透過速度の減少はまったくなかったが,ペクチン溶液においては急速な水透過速度の低下が見られた。しかし,ペクチンを塩化カルシウムで不溶化することにより水透過速度の低下を減少させることができた。従って,ペクチンが水透過に対する抵抗形成の主要成分であることがわかった。膜面付着ペクチンの分子量分布についてゲル濾過法を用い検討を加え,逆浸透濃縮中に膜面に付着するペクチンは高分子ペクチンが主体であることを確認した。