- 著者
-
岩井 八郎
- 出版者
- 数理社会学会
- 雑誌
- 理論と方法 (ISSN:09131442)
- 巻号頁・発行日
- vol.21, no.1, pp.13-32, 2006-04-30 (Released:2007-08-01)
- 参考文献数
- 48
本稿は、1980年代半ばより、20年間にわたって展開されてきたライフコースの計量的研究を整理し、今後の研究課題を検討する。ライフコースの計量的研究は、ユニークなライフヒストリー・データを作成した研究と標準化された大規模データを用いた研究に分けることができる。前者の例として、「大恐慌の子どもたち」、「フリーダム・サマー」、「非行少年のライフコース」を取り上げる。後者としては、ドイツのライフヒストリー研究があり、最近では1964年と71年出生コーホートの研究がある。標準化されたデータを用いた研究の課題として、ポスト近代産業社会の段階において生じている、各国のライフコースの変化を比較研究によって明らかにすることが求められている。研究の視点としては「経路依存性」と「個人主義の再構築」が重要である。日本の「現在」を検討するためにも、クロスセクショナルなスナップショットではなく、ライフコース分析の視点が重要である。