著者
岩井 八郎
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.13-32, 2006-04-30 (Released:2007-08-01)
参考文献数
48

本稿は、1980年代半ばより、20年間にわたって展開されてきたライフコースの計量的研究を整理し、今後の研究課題を検討する。ライフコースの計量的研究は、ユニークなライフヒストリー・データを作成した研究と標準化された大規模データを用いた研究に分けることができる。前者の例として、「大恐慌の子どもたち」、「フリーダム・サマー」、「非行少年のライフコース」を取り上げる。後者としては、ドイツのライフヒストリー研究があり、最近では1964年と71年出生コーホートの研究がある。標準化されたデータを用いた研究の課題として、ポスト近代産業社会の段階において生じている、各国のライフコースの変化を比較研究によって明らかにすることが求められている。研究の視点としては「経路依存性」と「個人主義の再構築」が重要である。日本の「現在」を検討するためにも、クロスセクショナルなスナップショットではなく、ライフコース分析の視点が重要である。
著者
岩井 八郎
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.82, pp.61-87, 2008-06-15 (Released:2017-06-01)
参考文献数
25
被引用文献数
1

In Japan, the period from the early 1990s to the early 2000s is known as the lost decade. It is said that the economic recession, aging of society, declining birth rate, downsizing of enterprises and new gender role attitudes changed the patterns of oneʼs life. During that period, women born in the early 1970s, who belong to the second generation of the postwar Baby Boomers, completed their education and entered into the labor market. Using work history data from SSM surveys, this paper clarifies how Japanese womenʼs life course has changed from the cohort born in 1970-74. Although the M-shaped pattern of womenʼs labor force participation still characterizes womenʼs life course, the work life patterns of women in their twenties and early thirties has changed from the 1970-74 birth cohort. Fulltime employment is declining and the number of part-time and other irregular employees is growing. Mobility between workplaces has become increasingly frequent. Few women follow the pattern of transition from clerical workers to homemakers. The link between university education and work careers for women has strengthened. Using a graphic presentation, this paper demonstrates the differentiation of womenʼs life courses in Japan.
著者
岩井 八郎
出版者
京都大学大学院教育学研究科
雑誌
京都大学大学院教育学研究科紀要
巻号頁・発行日
vol.67, pp.99-121, 2021-03-25

戦時体制下において, 女性の教育機会は拡大し労働力需要も著しく高まったが, その一方で出産力と家族を維持するための政策も次々と打ち出された.本稿は, 「職業移動と経歴調査(女子調査), 1983」の再分析によって, 戦時体制が女性のライフコースに与えた影響を明らかにしている.分析では, 1913-20年出生, 1921-25年出生, 1926-30年出生の3つの出生コーホートについて, 学歴別に人生パターンを比較している.分析結果として, 1921-25年出生の10代後半から20代前半に戦時体制の影響が強くあらわれていた.とりわけ中等教育卒の中で, 20歳までに事務職が急増し, それが25歳までに急減している点が重要である.高度成長期以降, M字型就業パターンは日本人女性のライフコースの特徴とされてきた.本稿は, 20代半ばまでのパターンの原型が戦時体制下で中等教育を終え就業した若い女性層に登場したと論じている.# ja
著者
落合 恵美子 伊藤 公雄 岩井 八郎 押川 文子 太郎丸 博 大和 礼子 安里 和晃 上野 加代子 青山 薫 姫岡 とし子 川野 英二 ポンサピタックサンティ ピヤ
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

アジアの家族は多様であり、東アジアと東南アジアの違いというような地理的違いにも還元し尽くせないことが、統計的に明らかになった。一枚岩の「アジアの家族主義」の伝統も現実も存在しない。しかし圧縮近代という共通の条件により、国家よりも市場の役割の大きい福祉レジームが形成され、そのもとでは家族の経済負担は大きく、移民家事労働者の雇用と労働市場の性質によりジェンダーが固定され、近代的規範の再強化も見られる。