- 著者
-
清水 裕士
稲増 一憲
- 出版者
- 数理社会学会
- 雑誌
- 理論と方法 (ISSN:09131442)
- 巻号頁・発行日
- vol.34, no.1, pp.113-130, 2019 (Released:2020-06-25)
- 参考文献数
- 37
本研究の目的は,保守‐革新についての政治的態度の母集団分布の形状を推定することである.これまで単項目の政治的イデオロギー尺度によって分布の形状が分析されてきたが,回答の難しさと反応バイアスの影響を強く受けることが指摘されてきた.そこで本研究ではSGEDを態度の事前分布とした一般化段階展開法による項目反応モデルを用いて,反応バイアスを補正する統計モデリングを活用し,母集団分布の形状を推定した.また同時に,政治的知識の程度によって形状がどのように変わるのかを検討した.分析の結果,反応バイアスを除去する前の分布はラプラス分布に似た中に収斂した分布となり,バイアスを補正したのちには正規分布に近づいたが,依然尖度が高い分布となった.また政治的態度による違いが大きく,政治的知識が少ない回答者の分布は中に収斂する一方,多い回答者の分散が大きく,正規分布に比べて尖度が小さい一様分布に近い分布となった.このことから,政治的知識の程度に応じて,周りから受ける影響が異なる態度形成メカニズムが推論できる.