- 著者
-
吉田 政幸
井上 尊寛
伊藤 真紀
- 出版者
- 法政大学イノベーション・マネジメント研究センター
- 雑誌
- イノベーション・マネジメント (ISSN:13492233)
- 巻号頁・発行日
- vol.18, pp.161-186, 2021-03-31 (Released:2021-03-31)
- 参考文献数
- 67
映画、音楽、スポーツなどの娯楽産業には多くのファンコミュニティが存在する。本研究は人々の間でアイデンティティの共有が生じやすいプロスポーツチームのファンコミュニティに着目し、ファンコミュニティ・アイデンティフィケーションの因子構造を多次元的に明らかにするとともに、その先行要因と結果要因を理論的に説明することを目的とした。調査はプロ野球(研究1)とプロサッカー(研究2)のホームゲームにおいて実施し、収集したデータを用いて因子分析と構造方程式モデリングを検証した。研究1ではファンコミュニティ・アイデンティフィケーションを構成する要因として6因子を特定し、さらにこれらをファンコミュニティ・アイデンティフィケーションの一次因子とした高次因子モデルを推定した。その結果、モデルはデータに適合し、多次元的尺度の構成概念妥当性を支持する証左を得た。研究2においても尺度モデルの概念的妥当性が示され、さらに仮説を検証したところ、(1)ステレオタイプ的なイメージに基づく関係性(ファンコミュニティの独自性→行動的ロイヤルティ)と(2)人と集団の価値観の一致に基づく関係性(ファンコミュニティとの類似性→ファンコミュニティ・アイデンティフィケーション→行動的ロイヤルティ)という二種類の関係性の存在を明らかにした。本研究結果とその理論的説明は集団的な消費者心理や行動に関する研究の発展に寄与するものである。