著者
中井 誠一
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.67-75, 2019-10-01 (Released:2019-10-24)
参考文献数
22

人口動態統計では「熱中症」という用語を用いた死亡統計の分類はなく,「傷病および死亡の外因」の中に,1994年までは「過度の高温(E900)」,1995年以降では「自然の過度の高温への曝露(X30)」と「人工の過度の高温への曝露(W92)」の項目があり,これらが外因としての暑熱による死者数と考えられる.厚生労働省 の広報資料においても「自然の過度の高温への曝露(X30)」を熱中症による死亡数とすると掲載されている.しかし,「損傷,中毒およびその他の外因の影響」の中に,1994年までは「熱作用(N992)」と「熱および光の作用(992)」,1995年以降は「熱及び光線の作用(T67)」の小分類として,熱射病や日射病などの熱中症の具体的な症状が示されているので,T67が傷害の性質としての熱中症死者数に相当すると考えられる.本研究ではこれらの統計分類について熱中症に関連する死亡数を比較した.1994年までは統計分類による死亡数に顕著な差は認められなかったが,1995年から2017年まではT67がX30よりも高値で,X30にW92を加算するとT67と X30+W92との差は小さくなった.これらは外因のコードであるE900が1995年以降ではX30とW92に分割して表示されたことが原因と考えられる.暑熱による死亡数を示す場合,自然の過度の高温による死亡数(原因による分類)を示すよりも,傷害の性質による死亡数を用いることが妥当と考えられ,熱及び光線の作用(T67)による死亡数が我が国における熱中症死亡数を示していると考えられる.

言及状況

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@kankimura どぞ https://t.co/nr4fcdGfZH 昔は「高齢者が少なかったので熱中症で死ぬ人も少なかった」という話になります。 あと昔の学校はほんとダメ
‘95年あたりで統計の取り方が変わったりして、劇的に増えてるように見えることがある。 以下のような論文もあり、死亡統計は、それ自体が研究対象になるような微妙なものであるという認識も必要です ▶︎我が国における熱中症の死亡統計-どのような統計分類を使用すべきか https://t.co/6oFvvRBAK0
熱中症関連死亡数については少し調べれば出てきます すでに1968年から、変死として発見されたとしてもそれが熱中症かどうか?はきちんと調査報告されていることが分かります https://t.co/TbymkfhshH https://t.co/LC7djtIJtv
おおよそその区分で比較して問題なさそうとの論もありますね。 異論は出てるかもしれませんが調べきるだけの能力を欠いてるのですみません。 https://t.co/G5f05i5PZV
我が国における熱中症の死亡統計 ―どのような統計分類を使用すべきか?― 中井誠一 2019/8 https://t.co/kAVieTJDqP

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