著者
磯﨑 哲夫
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.267-278, 2019-11-29 (Released:2019-12-20)
参考文献数
65
被引用文献数
1 1

本小論は,理科カリキュラムの内容構成論について,比較教育史的アプローチに基づき知識論を援用しながら,19世紀から現在までの3つの時代区分により,日本とイギリスを比較しながら論じた。そして,誰が学習内容を決定し,何を基準として学習内容が選定されるかについて考察した。その結果,両国の科学(理科)教育の史的展開を比較すると,まず,科学(理科)教育を完成した所与のものと見なすのではなく,社会的・歴史的産物と見なすべきことを指摘した。重要なのは,目的・目標論,別の表現をすれば,理科教育を通してどのような資質・能力を備えた人間を形成するかという前提条件のもとで,学習内容(科学(そのもの)の)知識と科学についての知識)を選択し決定するべきであり,そのためには社会や学界を十分に巻き込んだ議論を踏まえて,目標や内容等を決定する“noosphere”における議論が必要である,ということである。理科は自然科学を基盤としている教科である,という分離教科カリキュラムや学問中心カリキュラムの定義を,グローバル化の視点と現代的文脈で再解釈する必要に迫られていることを指摘した。

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