著者
西川 洋史
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.675-680, 2022-03-31 (Released:2022-03-31)
参考文献数
8

生物分類や発生生物学領域の研究で作製される透明骨格標本は,生体標本にアリザリンレッドSやアルシアンブルーなどの染色液を浸透させ,硬骨及び軟骨を染色後に内臓・筋肉の組織を透明にした標本である。透明骨格標本の作製方法は様々であるが,一般的にホルマリンや水酸化カリウムなどの危険な化学薬品を使うことが多い。脂質除去に用いるキシレンやアセトンなどの有機溶剤は,臭気が強いため,生徒によっては気分が悪くなることがある。このような安全性や快適性の問題から,授業において生徒に透明骨格標本を作製させることは難しい。タンパク質分解で用いるトリプシンや透徹に使う高純度グリセリンは高価であり,中高等学校における生徒実験としてルーチン化するにはコスト面で問題がある。また,透徹処理で使用する水酸化カリウムは,強アルカリのため生徒が扱う際には注意喚起と皮膚接触時の対応が必要であり,安全性に気をつける必要がある。しかし,透明骨格標本の製作過程では,生体をほとんど解体する必要がないため,微細な骨を紛失することがなく,骨の立体配置やバランスもほぼ完全に保存されている。従って,骨と内臓の位置関係や運動機能,発生を考えるのに適した教材と言える。例えば海洋環境教育や理科教育における持続的発展教育ESD(Education for Sustainable Development)での活用事例がある。そこで本研究では,安全性向上のために透徹用試薬を検討した。具体的にはトリプシンの代わりにパパインを使用した。また,水酸化カリウムとグリセリンの代わりに各種弱アルカリ物質と洗剤を検討した。その結果,リン酸水素ニナトリウム飽和溶液が透徹に効果的であることがわかった。

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