- 著者
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児玉 龍彦
- 出版者
- 日本毒性学会
- 雑誌
- 日本毒性学会学術年会 第48回日本毒性学会学術年会
- 巻号頁・発行日
- pp.EL7, 2021 (Released:2021-08-12)
新型コロナウィルスは1年で3万塩基の配列のうち24箇所程度に変異を起こす。比較的安定的なRNAウィルスである。3ヶ月程度ごとに新たな変異を持つウィルスが選択され、感染者数が上昇し、自壊するように下降する波を描く。 こうした周期性を生み出すメカニズムとして、一定の変異は自然に起こっているが、選択は、分子レベル、ホストの免疫、社会的な隔離や治療、動物との人獣共通感染などの相互作用のマルチスケールフィードバックが想定され、数年のうちにパンデミックは終息することが期待されている。 問題は、波のたびにエピセンター(震源地)でbasic cladeと呼ばれる比較的安定な起源となるウィルスの保因者が増え、そこから変異株が生み出されていくことにある。特に問題となるのは、感受性を抑え終息を加速化させるワクチンへの抵抗性のウィルスが増大することである。 周期性を生み出すマルチスケールのフィードバックのメカニズムから見たコロナウィルスの終息への対応策を考えたい。