著者
濱本 真一
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.83-93, 2015-07-16 (Released:2018-03-28)
参考文献数
23

本論は,教育達成の階層差生成過程およびその世代変化を検証するものである.日本の学校教育は,戦後から拡大を続け,量的な飽和とともにその内部における質的な差異に関しても注目が集まるようになってきた.質的差異によって,同じ教育段階であっても「よい学校」へのアクセスに対して出身家庭背景の影響力があることが指摘されている. 特に本論では中学校段階(国私立/公立)も含めた各教育段階の質的な差異に着目し,それぞれに出身家庭背景の影響力が存在しているのかを検討するとともに,前期の教育選抜の結果が後の教育段階に与える影響(トラッキング)の変化も同時に考察する. 分析の結果,(1)中学校,高校,高等教育すべての段階に関して出身家庭背景による質的分化があること,(2)若年世代において高校に対する直接の階層効果は減少していること,(3)トラッキングの構造は一定ないしは強化されていること,(4)高等教育段階に関する直接の階層効果は増大していること,が確認された.これらより,若年世代において出身家庭背景は,中学校段階における分化の継承と,最終学歴段階による直接的な影響として教育達成過程に働きかけることが明らかとなった. 中学校と高等教育段階の質的差異は今後も拡大することが予想され,個人の教育達成過程は今後もますます階層による影響を受けやすくなることが示唆される.

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諸外国と同様日本の受験制度も階層の再生産に、特に近年は高等教育が階層の再生産に貢献している。 https://t.co/jN7ykfVMC9 https://t.co/hhfcNwHMZD https://t.co/Ir52pn5uPT

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