著者
相澤 真一 濱本 真一
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.104, pp.147-167, 2019-06-30 (Released:2021-04-01)
参考文献数
90

本論では,高等教育研究を参照してきた隣接分野の立場から,教育社会学研究としての高等教育研究について,今後の研究への問題提起と期待を提示する。本研究が提示する高等教育研究の隣接分野とは,主に,中等教育研究と社会階層・社会階級・社会移動研究(以下,略して,階層移動研究)である。 それらの隣接分野の視点から見た場合,高等教育研究にはいくつかの課題が指摘できるように思われる。第1は,「日本の」高等教育の選抜を理解するために,その本質的な部分に関する定義を見直す必要があるのではないかということである。第2は,日本の高等教育制度は,社会階層構造に対して,どのような制度的文脈を持っており,どのような機能を保持しているかを明らかにすることが求められているという点である。第3は,高等教育研究ならではの視点である「高等教育機関が行う研究」を社会学的対象として配置していくことが必要となるという点である。 以上の3点を踏まえて,日本の高等教育が制度的,歴史的に,世界のどのような類型に近く,どのような事例と比較されうるかを吟味することによって,より抽象度の高い階層移動研究に組み込んでいくことができると考えられる。また,日本の高等教育の特質を,隣接分野の文脈と共通性を持ちながら,より広い文脈を持った言葉で社会学的に明らかにしていくことにより,高等教育研究がより緊密に国際的な研究と結びついていくであろう
著者
濱本 真一
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.83-93, 2015-07-16 (Released:2018-03-28)
参考文献数
23

本論は,教育達成の階層差生成過程およびその世代変化を検証するものである.日本の学校教育は,戦後から拡大を続け,量的な飽和とともにその内部における質的な差異に関しても注目が集まるようになってきた.質的差異によって,同じ教育段階であっても「よい学校」へのアクセスに対して出身家庭背景の影響力があることが指摘されている. 特に本論では中学校段階(国私立/公立)も含めた各教育段階の質的な差異に着目し,それぞれに出身家庭背景の影響力が存在しているのかを検討するとともに,前期の教育選抜の結果が後の教育段階に与える影響(トラッキング)の変化も同時に考察する. 分析の結果,(1)中学校,高校,高等教育すべての段階に関して出身家庭背景による質的分化があること,(2)若年世代において高校に対する直接の階層効果は減少していること,(3)トラッキングの構造は一定ないしは強化されていること,(4)高等教育段階に関する直接の階層効果は増大していること,が確認された.これらより,若年世代において出身家庭背景は,中学校段階における分化の継承と,最終学歴段階による直接的な影響として教育達成過程に働きかけることが明らかとなった. 中学校と高等教育段階の質的差異は今後も拡大することが予想され,個人の教育達成過程は今後もますます階層による影響を受けやすくなることが示唆される.
著者
池田 岳大 濱本 真一
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.139-149, 2019-08-30 (Released:2021-02-26)
参考文献数
19

本研究では,無業リスクに関する高校学歴格差とその趨勢について検討する.先行研究では,高い職業的地位への到達可能性において職業科トラックは普通科トラックよりも下位に位置付けられる一方で,職業科トラックが無業リスクを軽減するセーフティネットとしての機能を果たす可能性も指摘されている.この機能は,人的資本論的な教育効果として説明されるのか,それとも「日本的高卒就職システム」のマッチングシステムとして個人の教育年数のみでは捉えきれない質的差異により説明されるのか,検討の余地が残る.以上を踏まえ,調査データを用いて無業リスクに関する普通科,職業科の違いとその趨勢を検討した.分析の結果から,①初職入職時の間断リスクにおいては普通科に比して職業科の優位性がみられるものの,一度職業に就いた後の無業移行リスクに両者の違いはみられない,②工業科からの進学など一部の職業科では,中等後教育への進学はむしろ無業リスクを高める,③これらの構造は,高卒無業者の増加した1990年代以降も状態は大きく変化していない,という3点が分かった.すなわち職業科トラックのセーフティネット機能は間断リスクの低さでみられ,また無業移行リスクの結果も鑑みると,この機能は人的資本論的なミクロレベルの説明よりも,「日本的高卒就職システム」のマッチングシステムというメゾレベルの説明がより妥当であると結論づけられる.
著者
濱本 真一
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.115-125, 2012-07-14 (Released:2014-03-26)
参考文献数
14
被引用文献数
2

本稿の目的は,公立中高一貫校の拡大に焦点を当て,その導入時期と拡大スピードに影響を与える要因を分析することである.中高一貫校を,中学校入学段階で選抜を行う「受験型(併設型,中等教育学校)」と選抜を行わない「連携型」に分別し,それぞれに対して人口的,地域的要因をイベントヒストリー分析およびマルチレベルモデルによって検証した.分析の結果,受験型一貫校設置に対しては教職員組合の規模が,連携型に対しては受験型一貫校の数が,その設置時期を遅らせる要因として作用しているということが分かった.加えて,それぞれの量的拡大の要因を分析した結果,受験型の拡大には私立学校の割合,他県への生徒流出,財政力が有意な影響を与え,受験型の一貫校が持つ生徒獲得の側面が明らかになった.連携型は比較的財政力の少ない県に設置され,受験型を設置できない地域の代替的な役割を担っているが,全国的に平原化しているということが分かった.受験型と連携型は現在補完的な役割を担っているが,受験型の増加と連携型の平原化の傾向から,今後中高一貫校が量的に拡大しても,地域による教育機会の格差が存続し続ける可能性が示唆される.
著者
濱本 真一
出版者
東北社会学研究会
雑誌
社会学研究 (ISSN:05597099)
巻号頁・発行日
vol.96, pp.115-137, 2015-07-10 (Released:2022-01-21)
参考文献数
21

本稿の目的は、中学校段階も含めた日本の教育達成過程における階層間格差を抽出することである。これまでの教育達成に関する研究では、学校段階以降における質的差異、すなわちどのようなタイプの学校に進学するかに階層間格差が存在し、さらにのちの教育段階に影響を与えることが知られてきた。義務教育段階である中学校においても、都市圏を中心に国私立中学校のシェアが増加傾向にあり、教育機会の質的な差異が拡大している。本稿では、国私立中学校への進学に対して出身階層の影響力が存在するのか、そして階層による規定力は後の学校段階(高校、高等教育)と比較してどの程度の大きさなのかを測ることを目的とする。 分析の結果、(1)国私立中学校進学に対して出身階層の影響力が存在すること、(2)その効果の大きさは高校以上の段階と比べて暮らし向きに関して大きく、父学歴、父職では大きくないことが明らかとなった。中学校段階にも明確な階層分化機能が存在していること、国私立中学校の進学に関しては家庭の経済的な背景が重要な決定要因となることが示された。中学校段階においては、近年公立学校においても選抜を課すタイプの中高一貫校が増加しており、中学校段階での階層分化機能がより大きくなる可能性が示唆される。
著者
相澤 真一 濱本 真一
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.104, pp.147-167, 2019

<p> 本論では,高等教育研究を参照してきた隣接分野の立場から,教育社会学研究としての高等教育研究について,今後の研究への問題提起と期待を提示する。本研究が提示する高等教育研究の隣接分野とは,主に,中等教育研究と社会階層・社会階級・社会移動研究(以下,略して,階層移動研究)である。<br> それらの隣接分野の視点から見た場合,高等教育研究にはいくつかの課題が指摘できるように思われる。第1は,「日本の」高等教育の選抜を理解するために,その本質的な部分に関する定義を見直す必要があるのではないかということである。第2は,日本の高等教育制度は,社会階層構造に対して,どのような制度的文脈を持っており,どのような機能を保持しているかを明らかにすることが求められているという点である。第3は,高等教育研究ならではの視点である「高等教育機関が行う研究」を社会学的対象として配置していくことが必要となるという点である。<br> 以上の3点を踏まえて,日本の高等教育が制度的,歴史的に,世界のどのような類型に近く,どのような事例と比較されうるかを吟味することによって,より抽象度の高い階層移動研究に組み込んでいくことができると考えられる。また,日本の高等教育の特質を,隣接分野の文脈と共通性を持ちながら,より広い文脈を持った言葉で社会学的に明らかにしていくことにより,高等教育研究がより緊密に国際的な研究と結びついていくであろう</p>