著者
佐々木 信博 上野 幸司 白石 武 吉村 章 久野 宗寛 武田 真一 斎藤 孝子 安藤 康宏 草野 英二
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 = Journal of Japanese Society for Dialysis Therapy (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.41, no.10, pp.723-730, 2008-10-28
被引用文献数
2 5

近年われわれは,高精度体成分分析装置(InBody S20)を用いた生体電気インピーダンス(BIA法)が血液透析患者の体液量評価に有用であることを報告し,特に浮腫値(細胞外水分量(ECW)/体水分量(TBW))やInBody S20でのDW(BIA-DW)が,臨床的DW(Cl-DW)の一つの指標となることを報告した.今回われわれは,糖尿病,心不全,低アルブミン血症,透析低血圧例,肥満患者,透析期間,尿量維持患者などの各種疾患や病態別に透析後の浮腫値を中心に具体的なDW設定基準について検討を行った.対象は当院で維持透析を施行している57名で,透析前後でInBody S20による各種体液量と血液一般検査,透析後にhANP,BNP,胸部X線による心胸郭比(CTR),心臓超音波検査による下大静脈(IVC)径,左室駆出率(EF)などを測定した.全ての病態で浮腫値は透析後に有意に低下した(p<0.0001).透析後浮腫値は,血清Alb値と負の相関を示し(r=-0.720,p<0.0001),糖尿病群では非糖尿病群にくらべ有意に高値を示した(p<0.0001).そこで,糖尿病と低Alb血症の有無による4群での検討を行った.透析後浮腫値は,I群(DM(-),低Alb(-)):0.384±0.005にくらべ,II群(DM(-),低Alb(+)):0.397±0.013,III群(DM(+),低Alb(-)):0.398±0.011で有意に高値を示し(p<0.001),IV群(DM(+),低Alb(+)):0.404±0.012で最も高値を示した(p<0.0001).InBody S20で求められる理想的なDW(BIA-DW;浮腫値0.380のBW)と実際の臨床的DW(Cl-DW)は,強い正相関(r=0.996,p<0.0001)を示し,I群においてはその値はほぼ一致し,II群,III群においてはBIA-DWよりも0.5~0.8kg程度上乗せした体重が,IV群では1kg程度上乗せした体重がCl-DWとなることが示された.一方,浮腫値は,血圧,心機能,透析期間,尿量とは相関を認めなかった.InBody S20で求められる透析後浮腫値は,原疾患の有無にかかわらず,透析患者のDWの一指標となりうると考えられた.

言及状況

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編集者: 敦賀 ひで
2015-03-20 17:09:08 の編集で削除されたか、リンク先が変更された可能性があります。

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