著者
佐々木 信博 上野 幸司 白石 武 久野 宗寛 中澤 英子 石井 恵理子 安藤 康宏 草野 英二
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.40, no.7, pp.581-588, 2007-07-28 (Released:2008-11-07)
参考文献数
17
被引用文献数
3 5 2

生体電気インピーダンス法 (BIA法) は, 生体に微弱な電流を流して, 身体の体水分量 (TBW), 細胞外水分量 (ECW), 細胞内水分量 (ICW), 体脂肪量 (BFM) などを測定することが可能であり, 透析患者のドライウェイト (DW) の指標になり得ると考えられる. 高精度体成分分析装置であるInBody S20は, 多周波数分析, 8点接触型電極, 部位別測定, 仰臥位測定といった特徴を有し, 高い精度と再現性が立証されており, 近年, その臨床報告が相次いでいる.今回われわれは, 本装置を用い各種体液量を測定し, DWの指標となり得るか検討した. 対象は当院で維持透析を施行している41名で, 透析前後でInBody S20による各体液量と一般血液検査, hANPを測定し, 透析後に胸部X線による心胸比 (CTR) と超音波断層法による下大静脈径 (IVC) を測定した. その結果, 1) hANPは, CTR, IVCe (安静呼気時最大径) とそれぞれ有意相関 (p<0.01, p<0.05) を認めた. 2) 各種体水分量 (TBW, ECW, ICW) は, 透析後に有意に低下し, IVCeと有意相関 (p<0.001) を認めた. 3) 体水分量変化率 (%TBW) は, 循環血液量変化率 (%BV) や循環血漿量変化率 (%CPV) と有意相関 (p<0.001) を認めた. 4) 浮腫値 (ECW/TBW) は, 透析後に有意に低下し (p<0.001), hANPと有意相関を認めた (p<0.001). 5) InBodyで測定した透析後DW (BIA-DW ; 浮腫値0.38のBW) と臨床でのDW (cDW) は, 強い正相関を示した (r=0.99, p<0.001).InBody S20は, 簡便性, 非侵襲性, 即時性に優れ, 血液透析患者の体液量・体組成の定量的評価が可能で, 浮腫値や透析後BIA-DWは, 実際のDWの指標として有用と考えられた.
著者
佐々木 信博
出版者
The Japan Institute of Electronics Packaging
雑誌
HYBRIDS (ISSN:09142568)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.21-27, 1992-03-01 (Released:2010-03-18)
参考文献数
4
被引用文献数
3
著者
佐々木 信博 安藤 康弘 大友 貴史 石原島 繁彦 草野 英二 浅野 泰
出版者
社団法人 日本腎臓学会
雑誌
日本腎臓学会誌 (ISSN:03852385)
巻号頁・発行日
vol.41, no.8, pp.818-824, 1999 (Released:2010-07-05)
参考文献数
14

We report a case whose renal failure was due to malignant hypertension and in whom steroid facilitated the recovery of renal function. The patient, a 41-year-old man, was admitted to our hospital because of malaise and macrohematuria. On admission, his blood pressure was 270/160 mmHg. The plasma renin activity (PRA) and aldosterone were markedly elevated. Chest X-ray, echo cardiography and electrocardiogram revealed marked hypertrophy. Hypertensive retinopathy and arteriosclerotic change were noted on ophthalmoscopy. Because of renal dysfunction (blood urea nitrogen 45.6 mg/dl, serum creatinine 4.9 mg/dl with massive proteinuria and increased FENa, renal biopsy was performed on the 8th clinical day. The specimens showed slight proliferation of mesangial cells with mesangiolysis and inter stitial cell infiltration, in addition to marked arteriosclerosis and partial collapse of the glomerular tuft. After the administration of a Ca antagonist and angiotensin converting enzyme inhibitor (ACE-I), his mean blood pressure decreased to 100-130 mmHg, and urinary protein decreased as well. Nevertheless, renal dysfunction remained unchanged during the following 3 weeks. Thus, prednisolone (PSL, 30 mg/day) was administered on the 22nd clinical day and renal function improved thereafter without a significant change in blood pressure. The improved renal function was maintained after PSL tapered off on the 184th clinical day. It is suggested that PSL might be the therapy of choice in malignant hypertension, when the renalfunction has not been improved by anti-hypertensive treatment alone.
著者
佐々木 信博 上野 幸司 白石 武 吉村 章 久野 宗寛 武田 真一 斎藤 孝子 安藤 康宏 草野 英二
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 = Journal of Japanese Society for Dialysis Therapy (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.41, no.10, pp.723-730, 2008-10-28
被引用文献数
2 5

近年われわれは,高精度体成分分析装置(InBody S20)を用いた生体電気インピーダンス(BIA法)が血液透析患者の体液量評価に有用であることを報告し,特に浮腫値(細胞外水分量(ECW)/体水分量(TBW))やInBody S20でのDW(BIA-DW)が,臨床的DW(Cl-DW)の一つの指標となることを報告した.今回われわれは,糖尿病,心不全,低アルブミン血症,透析低血圧例,肥満患者,透析期間,尿量維持患者などの各種疾患や病態別に透析後の浮腫値を中心に具体的なDW設定基準について検討を行った.対象は当院で維持透析を施行している57名で,透析前後でInBody S20による各種体液量と血液一般検査,透析後にhANP,BNP,胸部X線による心胸郭比(CTR),心臓超音波検査による下大静脈(IVC)径,左室駆出率(EF)などを測定した.全ての病態で浮腫値は透析後に有意に低下した(p<0.0001).透析後浮腫値は,血清Alb値と負の相関を示し(r=-0.720,p<0.0001),糖尿病群では非糖尿病群にくらべ有意に高値を示した(p<0.0001).そこで,糖尿病と低Alb血症の有無による4群での検討を行った.透析後浮腫値は,I群(DM(-),低Alb(-)):0.384±0.005にくらべ,II群(DM(-),低Alb(+)):0.397±0.013,III群(DM(+),低Alb(-)):0.398±0.011で有意に高値を示し(p<0.001),IV群(DM(+),低Alb(+)):0.404±0.012で最も高値を示した(p<0.0001).InBody S20で求められる理想的なDW(BIA-DW;浮腫値0.380のBW)と実際の臨床的DW(Cl-DW)は,強い正相関(r=0.996,p<0.0001)を示し,I群においてはその値はほぼ一致し,II群,III群においてはBIA-DWよりも0.5~0.8kg程度上乗せした体重が,IV群では1kg程度上乗せした体重がCl-DWとなることが示された.一方,浮腫値は,血圧,心機能,透析期間,尿量とは相関を認めなかった.InBody S20で求められる透析後浮腫値は,原疾患の有無にかかわらず,透析患者のDWの一指標となりうると考えられた.
著者
藤兼 俊明 藤田 結花 辻 忠克 松本 博之 佐々木 信博 清水 哲雄 坂井 英一
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.765-774, 1996-10-20
参考文献数
21
被引用文献数
2

女性肺癌の臨床像について, とくに喫煙歴に注目して男性と比較検討した.女性の喫煙率は男性の1/3以下, 平均喫煙指数も1/2以下であった.女性では男性と比較して腺癌, 無自覚症状者, 臨床病期I期, IV期, PS0, 4が有意に多く, 検診発見者が多い傾向にあった.しかし, 喫煙歴別では, 非喫煙女性で非喫煙男性に比較してPS0が有意に多かったほかに男女間に有意差はなかった.また, 喫煙女性は非喫煙女性と比較し自覚症状発見者, 有自覚症状者が有意に多く, IV期, PS4が多い傾向にあった.予後は, 全症例およびおもな予後因子で層別しても男女間に有意差はなかったが, 腺癌のIV期では女性の予後が有意に良好であった.女性肺癌の臨床像の特徴は男性と比較して喫煙歴が少ないことによる影響が大きいと考えられた.また, 喫煙歴の有無は男性と比較して女性でより大きく臨床像に影響を与えていた.