著者
小田 隆史
出版者
The Tohoku Geographical Association
雑誌
季刊地理学 = Quarterly journal of geography (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.12-27, 2010-03-15
被引用文献数
1

諸政策の新自由主義化にともなって,近年の米国都市社会においては,市民や民間企業等が,行政府や立法府と連携して都市社会を協治する「ガバナンス」という新秩序が創出されはじめ,この変化に関する隣接分野での研究が盛んになっている。こうした政策のパラダイムシフトが都市社会にもたらした変化の一端を捉え,新たな都市ガバナンスにおける行政と市民との連携のあり方を考える地理学的研究が求められる。その前提として,本稿は,米国カリフォルニア州サンフランシスコ市における歴史文化資源の保存に関係する法制度及び政策に関与する主体の変化に着目し,新旧制度の変化を整理,提示した。また,サンフランシスコ日本町において市民らがコミュニティ存続を訴えた「日本町保存運動」を取り上げ,この運動によって,旧来の行政による一般的な許認可手続きに加え,文化的遺産を考慮して再開発の許認可を行う特殊な法令・規制が付加された点,及び都市政策に日本町のNPO関係者や商店主等が,より直接的に関与するようになり,都市再開発にかかる主体と制度が変化・多様化した点を明らかにした。

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