- 著者
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チャンドララール ディリープ
- 出版者
- 沖縄大学
- 雑誌
- 沖縄大学人文学部紀要 (ISSN:13458523)
- 巻号頁・発行日
- vol.4, pp.11-30, 2003-03-31
本研究は,スリランカで使用されてきたポルトガル語を元にしたクレオール語の例を通して,言語の起源と消滅という両現象に関係するいくつかの重要な問題を提供する試みである。スリランカ・ポルトガル系のクレオール語に関する歴史的,言語社会学的情報を掘り出し,収集資料を言語接触の観点から解釈・分析・記述を行なうことに務める。言語資料の分析においては,言語的変化の過程が社会的変化の過程と並行して進むという前提を活用する。そして,言語の消滅が複雑に絡み合った政治経済的・社旗心理的要素に影響を受けることを指摘する。言語接触と言語消滅の一つの特例にとどまらず,言語の普遍的な問題についても検討を加える。例えば,言語変化の過程とはどのようなものか,その過程に関する接触,多様性や非活性化などの事実が言語理論にどのように貢献するのか,その過程を探ることによってどのような類型的,歴史的洞察が得られるのか,などの問題を考察する。最後に,言語接触が,ある言語形式の進化的発生の道を中断させながら,ことばの中に根本的な変化を持たせることを証明する。そうすることによって,接触言語の起源と存在が語族と祖語の仮説に対して大きな問題を提起することを主張する。