著者
関 文恭 吉田 道雄 篠原 しのぶ 吉山 尚裕 三角 恵美子 三隅 二不二
出版者
九州大学
雑誌
九州大学医療技術短期大学部紀要 (ISSN:02862484)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.1-10, 1999-03

本研究は, MOW国際比較研究の一環として, 日本・台湾・中国・オーストラリア・デンマークの大学生の"働くこと"に対する意識・態度を比較したものである。調査対象者は, 各国の大学生1678人であった。主要な結果は, 次の通りであった。(1)日本の学生の「仕事中心性」は, 5カ国の中で低いはうであり, 最も高かったのは中国の学生であった。また, 日本の学生がレジャーを最も重要と考えている点は, 他国の学生と比べて大きな特徴である。(2)働くことに対して, 中国の学生は, 日本の学生とは違ったイメージを抱いている。すなわち中国の学生は, 働くことを社会貢献として捉えているのに対し, 日本の学生は, 自己に課せられた仕事として把握している。(3)中国や台湾の学生は, "働くことは義務であり, 人は働いて社会に貢献すへき"という義務規範を強く支持している。一方, 日本の学生は, 権利規範を支持する度合いが強く, 職場の確保や教育・訓練は, 社会や雇用者側によってなされるべきであると考えている。(4)いずれの国の学生も, 働くことから得られるものとして, 「必要な収入」や「興味・満足感」に高い価値を与えている。中国の学生は, 他の4カ国の学生よりも「社会貢献の手段」として価値づけている。(5)仕事と余暇の関係について, 日本では, "余暇のための仕事"と考える学生の割合が, "仕事のための余暇"と考える学生の割合を上回っている。また, "趣味に合った暮らし"を望む学生の割合か, 他の4カ国よりも高い。(6)職業選択の基準として, 日本・台湾・中国では"適性"を重視する学生か多い。日本の学生は"やり甲斐"を重視する者も多いが, 仕事(職業)に対して, 明確な目標や期待を持っている学生は少ない。本研究の結果から, とくに日本と中国の学生の間で, "働くこと"に対する意識に対照的な違いが見いだされた。今後は, 両国の学生の意識の構造について分析を進めていく必要があろう。

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