著者
岡嶋 恒 舘林 啓二
出版者
北海道教育大学
雑誌
釧路論集 : 北海道教育大学釧路分校研究報告 (ISSN:02878216)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.79-86, 2003-11-30

剣道と薙刀以外の運動競技においては、打突時に打突する部位(メン、コテ、ドウなど)を呼称することはない。剣道の有効打突の条件は「充実した気勢、適正な姿勢をもって、竹刀の打突部で打突部位を刃筋正しく打突し、残心あるものとする」であり、打突部位を呼称しなければならないという項目は見当たらない。現在の「打突時における打突部位呼称」が、いつ頃から行われるようになったのか、その経緯についての知見を得ることを目的とした。流派が発生し、特徴ある修行方法や技術を作り上げていく過程において打突・斬突時に発声が行なわれており、そのことが打突部位呼称への発展に大きく関わっていく。江戸時代初期には、発声が打突・斬突を効果的にする働きがある要素として認識されていたことが推察できる。江戸時代中期には防具の改良が進み、「面」「籠手」と打突部の名称が確認できるが、各流派で打突時の発声や打突部位が統一されていないために打突部位の呼称が浸透しなかったことが推察できる。剣術の技が面、龍手、胴、突きに分かれ、その部位を打突する技の研究が進んでいく江戸時代後期が打突部位呼称の萌芽期と考えられる。直心陰流の榊原健吉は「オメーン、オコテー」と打突部位呼称を行なっていた。明治44年、剣術が中学校の正科教材に加えられることになり、文部省は武術講習会を催した。ここで剣術の指導の内容・方法の統一が図られ、打突時の発声方法や打突部位呼称が示された。打突部位呼称は、簡明適切で自然な発声方法として採用され、剣道指導を効率よく行う手段として定着していった。以後これに沿った形で剣道指導が展開されることになる。昭和27年、「全日本剣道連盟試合規則」が制定され、有効打突の条件に「打突の三要素」が組み込まれ、現在においては有効打突の必要条件として確立されている。

言及状況

Twitter (15 users, 20 posts, 27 favorites)

ここら知らんので、ちょっと調べてみたけど、確かにそういうこと書いてる…ただ、打突時の発声などはより昔に遡ることも書かれている。あと撃剣興行以降にどういう経緯で掛け声が定まったかもかかれてる CiNii 論文 -  剣道における打突時の発声に関する一考察 https://t.co/i9HWOcSjS7 #CiNii
お勧めのは有料だったりするんで、無料で概略が纏まってるのとしてはこれが良いかと http://t.co/1axHgYZ0Ga @mon_emon
休日の過ごし方その一。http://t.co/iRzgU6jt
すごい論文だなあ。しかも執筆者の一人は大船渡中学校の人。無事だったのかなあ。まあ2003年の論文だから、転勤されている可能性も大いにあるが。 http://t.co/8wOTqWLm
お読みになってるかもしれませんが「剣道における打突時の発声に関する一考察」という論文が史的経緯をうまくまとめていて参考になります http://t.co/ytF1k22W RT @saimuragoro:
剣道で、いつ頃から面とか籠手って言うようになったのか、これ面白そうだから後で読む。 剣道における打突時の発声に関する一考察 http://t.co/UgzY9OOf

Wikipedia (1 pages, 1 posts, 1 contributors)

収集済み URL リスト