- 著者
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佐藤 正之
小久保 康昌
葛原 茂樹
- 出版者
- 一般社団法人情報処理学会
- 雑誌
- 情報処理学会研究報告. MUS,[音楽情報科学] (ISSN:09196072)
- 巻号頁・発行日
- vol.57, pp.131-137, 2004-11-05
音楽性幻覚の一例を通して、音楽の脳内機構について考察した。患者は75歳、女性、右利き。2002年8月4目夕方、突然、「夕焼け小焼け」が頭の中で鳴り出し、以降、会話中や歌番組を見ている時以外、起床直後から就寝するまで持続.自分で唄を唄うと止まるので別の曲を歌っていたところ、代わ引こその曲が聞こえるようになった.最終的には「夕焼け小焼け」を含めたそれらの曲が、順番に流れてくるようになった.旋律にはすべて歌詞がついており、患者自身か有名歌手の声であった.お囃子が伴奏に付き、曲の進行につれて合いの手の間隔が次第に短くなった.診察上、意識清明、聴力正常。血液・髄液検査正常。聴性脳幹反応・脳波正常。頭部MRI・SPECT正常。本例より以下の二点が示唆された:(1)旋律と伴奏、音色の脳内過程は(少なくとも一部は)異なる、(2)馴染みの旋律の受容と表出は(少なくとも一部は)異なる脳内過程を有する.