著者
川上 央 三戸 勇気
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. MUS,[音楽情報科学] (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.143-148, 2004-11-05
参考文献数
16

Rauscher(1993)のモーツァルト効果とはモーツァルトのピアノソナタの第一楽章を聴いた場合,空間課題の得点が上がったというものやあるが,この研究ではモーツァルトとサリエリの作品での効果の違いを,3分間の計算課題を行った前後の心拍,血圧,血流量,発汗,脳波を指標に検討した.その結果,モーツァルトとサリエリの作品において,顕著な生理反応の違いは見られなかったが,脳波パワスペクトルのβ1帯域において,楽曲による有意差が見られた.このことより,モーツァルト効果は脳波の一部の周波数に影響を及ぼすのではないかと考えた.
著者
佐藤 正之 小久保 康昌 葛原 茂樹
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. MUS,[音楽情報科学] (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.131-137, 2004-11-05

音楽性幻覚の一例を通して、音楽の脳内機構について考察した。患者は75歳、女性、右利き。2002年8月4目夕方、突然、「夕焼け小焼け」が頭の中で鳴り出し、以降、会話中や歌番組を見ている時以外、起床直後から就寝するまで持続.自分で唄を唄うと止まるので別の曲を歌っていたところ、代わ引こその曲が聞こえるようになった.最終的には「夕焼け小焼け」を含めたそれらの曲が、順番に流れてくるようになった.旋律にはすべて歌詞がついており、患者自身か有名歌手の声であった.お囃子が伴奏に付き、曲の進行につれて合いの手の間隔が次第に短くなった.診察上、意識清明、聴力正常。血液・髄液検査正常。聴性脳幹反応・脳波正常。頭部MRI・SPECT正常。本例より以下の二点が示唆された:(1)旋律と伴奏、音色の脳内過程は(少なくとも一部は)異なる、(2)馴染みの旋律の受容と表出は(少なくとも一部は)異なる脳内過程を有する.
著者
剣持 秀紀 大下 隼人
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. MUS,[音楽情報科学] (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.72, pp.25-28, 2007-10-11
参考文献数
7
被引用文献数
9

"VOCALOID"とは、ヤマハが開発した素片連結型の歌声合成技術およびその応用商品の総称である。すでにソフトウェア応用商品として数本が国内外で実際に市販されている。本稿では、VOCALOIDの基本構成、合成アルゴリズム、実際の商品でのユーザインタフェースを現時点での商品ラインナップを交えながら紹介し、最後に本技術の今後の見通しについても述べる。
著者
剣持 秀紀 大下 隼人
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. MUS,[音楽情報科学] (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.74, pp.51-56, 2008-02-08
参考文献数
7
被引用文献数
9

"VOCALOID"とは、ヤマハが開発した素片連結型の歌声合成技術およびその応用商品の総称である。2007年8月末に発売されたその応用商品「初音ミク」(クリプトン・フューチヤー・メディア株式会社)は、音楽制作用のソフトウェアとしては異例の販売本数を記録している。本稿では、VOCALOIDの基本構成、合成アルゴリズムを紹介し、今後の課題と展開について論じる。
著者
中村 光宏 林 恭守 澤田 秀之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. MUS,[音楽情報科学] (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.135-140, 2006-08-07
参考文献数
7

発話機構を全て機械系によって構成することにより、人間のような発話動作に基づいた音声の生成が可能となる。主に肺、声帯、声道部、鼻腔、聴覚部から構成される本発話ロボットは、声のピッチを変化させながら発話を生成することが可能である。ピッチ制御には複雑な声帯振動の解析が必要であるが、ここではシリコーンゴムを皮膚程度の柔度で成形した二枚の振動体の張力と、空気の流量を、モータにより操作することによって実現した。一方、調音のための共鳴管をシリコーンゴムで成形し、これを外側から棒で押し引きして声道断面積を変化させることにより、共鳴特性を変化させて母音や子音音声を生成することが可能である。本稿では、まず発話ロボットの構成について紹介し、次にニューラルネットワークを用いた聴覚フィードバック学習に基づく音声、音階の獲得と、楽譜作成インタフェースを用いた歌声生成について述べる。
著者
柴 玲子 根本 幾
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. MUS,[音楽情報科学] (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.139-142, 2004-11-05
参考文献数
3

和音の協和度の認知のメカニズムを調べるため、心理的協和度が異なる2音和音を聴いたときの脳磁図測定を行った。単音(A4:440Hz)と,440Hzから880Hz(A5)まで平均律で半音ずつ高くなっていく単音の2つを組み合わせて13種類の和音を合成し、測定を行った。その結果、実験に用いた和音の中で最も不協和とされる短2度(m2)の和音では、左右の聴覚誘発反応において、潜時200〜400msec付近の脳磁図の値が他の和音に比べて大きくなる傾向が見られた。この結果は、不協和音聴取時の潜時200〜400msec付近における複数の反応の存在を示唆する。
著者
米林 裕一郎 亀岡 弘和 嵯峨山 茂樹
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. MUS,[音楽情報科学] (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.7-12, 2006-05-13
参考文献数
4
被引用文献数
2

ピアノ曲演奏の運指をHMMを用いて自動決定するアルゴリズムを提案する。手の状態を「隠れ状態」とし、状態遷移から楽譜上の音符推移系列が出力されると考え、楽譜からViterbi探索により最尤状態遷移を求める。この手法により、指の独立性の難易度、黒鍵を含む鍵盤上での2次元的な指位置をモデル化できる。和音を含む両手の場合への拡張、音符長の考慮、学習、複数解の探索が可能な枠組みである。
著者
西山 正紘 北原 鉄朗 駒谷 和範 尾形 哲也 奥乃 博
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. MUS,[音楽情報科学] (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.31-36, 2007-02-23
参考文献数
13
被引用文献数
8

本稿では,アクセント構造およびムードの一致に基づいて,音楽と映像の調和の度合い(調和度)を計算する枠組を提案する.一般に,音楽と映像の調和要因としては,時間的なアクセントの一致による時間的調和と,ムードの一致による意味的調和の2つが存在する.従来の研究では,それぞれの要因のみしか扱っておらず,両要因を統一的に扱った事例は存在しない.そこで本稿では,音楽と映像の調和度を,アクセント構造の一致に基づいて定量化した調和度とムードの一致に基づいて定量化した調和度の重み付き線形和で表現する.アクセント構造の一致は音楽と映像それぞれの特徴量系列間の相関に基づいて,ムードの一致はそれぞれの特徴部分空間内における相互の特徴量の連想に基づいて定量化する.実映像作品を対象とし,本手法の有効性を実験により評価した.