- 著者
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大見 忠弘
柴田 直
- 出版者
- 一般社団法人電子情報通信学会
- 雑誌
- 電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
- 巻号頁・発行日
- vol.80, no.3, pp.244-256, 1997-03-25
- 被引用文献数
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5
単体トランジスタを極限まで小さくし, LSIの集積度をどんどん上げていくこと, これが現在のコンピュータハードウェア開発の基本である. しかしこれだけで, 果たして人間のように"しなやかに"ものごとを判断したり, 場合場合に応じて柔軟に適切な行動をとる, こんな情報処理システムができあがるのだろうか. 我々の答えは"NO"である. あらゆる電子システムの基本であるトランジスタそのものの機能を増大し, 基本素子のレベルから"しなやかさ"を導入することが必須であると主張する. 20世紀のエレクトロニクスは, 出力電流を単一の信号入力端子が制御するデバイス, つまりバイポーラトランジスタやMOSトランジスタ等の三端子デバイスによって作り上げられた. 21世紀の"人間としなやかに調和するエレクトロニクス"は, もっと自由度の高いデバイスを基本素子として要求している. つまり, 複数の信号入力端子が協調してその出力電流を決める新しい四端子デバイスである. 本稿では, ニューロンMOSトランジスタ(νMOS)を四端子デバイスの一例としてとらえ, しなやかな情報処理ハードウェアへの可能性を検証する.