- 著者
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岡野 司
村瀬 哲磨
坪田 敏男
- 出版者
- 社団法人日本獣医学会
- 雑誌
- The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
- 巻号頁・発行日
- vol.65, no.10, pp.1093-1099, 2003-10-25
- 被引用文献数
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9
27
岐阜県根尾村において,1998年から2000年にそれぞれ夏から秋にかけて合計21頭の野生雄ニホンツキノワグマ(Ursus thibetanus japonicus)を捕獲した.精巣の大きさを計測した後,精巣組織を採取し組織学的に観察した結果,精巣容量は1〜3歳でほとんど変化がなく,その後4歳で急激に増加し,5歳でピークを迎えた.精子形成は6〜8月に活発で,9月までに退行し,季節変化が明瞭であった.野生雄ニホンツキノワグマにおける性成熟年齢は3〜4歳であると推定された.血清中テストステロン濃度は0.05〜1.78ng/mlの範囲で,平均値±標準偏差は0.43±0.48ng/mlであった.免疫組織学的に4種類のステロイド合成酵素,すなわちcholesterol side-chain cleavage cvtochrome P450, 3β-hydroxysteroid dehydrogenase, 17-αhydroxylase cvtochrome P450およびaromatase cytochrome P450の局在を調べた結果から,ニホンツキノワグマにおいて,ライディッヒ細胞,セルトリ細胞および精細胞はアンドロジェン合成能を持ち,ライディッビ細胞,セルトリ細胞,精子細胞および精祖細胞はエストロジェン合成能を持つことが示された.