著者
中谷 裕美子 岡野 司 大沼 学 吉川 堯 齊藤 雄太 田中 暁子 福田 真 中田 勝士 國吉 沙和子 長嶺 隆
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.71-74, 2013 (Released:2013-09-19)
参考文献数
16
被引用文献数
4 5

沖縄島やんばる地域における広東住血線虫はクマネズミなどで寄生が確認されているものの,在来のケナガネズミなどにおける感染状況や病原性は不明であった。本症例はケナガネズミが広東住血線虫感染により死亡した初の報告事例であり,病原性が明らかとなった。これは人獣共通感染症である広東住血線虫症が,人のみならず野生動物にも悪影響を及ぼし,特に希少野生動物の多いやんばる地域においては大きな脅威となる可能性があることを示している。
著者
中谷 裕美子 岡野 司 大沼 学 吉川 堯 齊藤 雄太 田中 暁子 福田 真 中田 勝士 國吉 沙和子 長嶺 隆
出版者
Japanese Society of Zoo and Wildlife Medicine
雑誌
Japanese journal of zoo and wildlife medicine = 日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.71-74, 2013-06-01
被引用文献数
5

沖縄島やんばる地域における広東住血線虫はクマネズミなどで寄生が確認されているものの,在来のケナガネズミなどにおける感染状況や病原性は不明であった。本症例はケナガネズミが広東住血線虫感染により死亡した初の報告事例であり,病原性が明らかとなった。これは人獣共通感染症である広東住血線虫症が,人のみならず野生動物にも悪影響を及ぼし,特に希少野生動物の多いやんばる地域においては大きな脅威となる可能性があることを示している。
著者
岡野 司 大沼 学 長嶺 隆 中谷 裕美子
出版者
Japanese Society of Zoo and Wildlife Medicine
雑誌
Japanese journal of zoo and wildlife medicine = 日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.157-160, 2012-12-01
被引用文献数
1

交通事故で死亡した2頭の野生ケナガネズミ(<I>Diplothrix legata</I>)を沖縄県国頭村で2011年9月に得た。剖検時に,肉眼的なサルコシストが舌,咬筋,横隔膜および外腹斜筋などの骨格筋で多数認められた。寄生のある横紋筋の組織学的観察では,特に炎症反応はみられなかった。サルコシストから抽出したDNAのシークエンスにより,1,797塩基の18S rRNA(GenBank accession number AB691780)および1,441塩基の28S rRNA(GenBank accession number AB691781)の肉胞子虫の遺伝子を得た。これは南西諸島固有の希少種であるケナガネズミにおける肉胞子虫感染の初記録である。
著者
岡野 司 村瀬 哲磨 坪田 敏男
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.1371-1376, 2004-11-25
参考文献数
36
被引用文献数
2 24

ニホンツキノワグマ(Ursus thibetanus japonicus)は,日本国内におけるいくつかの地域では絶滅が危惧されており,精液の採取と凍結保存は,遺伝資源の保存手段として重要である.本研究では,野生ニホンツキノワグマより精液を採取してその性状を調べるともに凍結保存した.4頭の野生ニホンツキノワグマから,捕接地点である山中において,電気刺激射精法を用いて精液を採取した.4頭全てにおいて,運動性を持った精子を含む精液が得られた.精液量,総精子数,精子運動率,精子生存率および精子奇形率(範囲(平均))は,それぞれ0.65-2.20(1.51)ml,99-1082(490)×10^6,5-100(31)%,42-97(66)%および20-87(53)%であった.3頭の精液を,卵黄-トリス-クエン酸-グルコース液で希釈し,液体窒素中で凍結保存した.すべての場合において,凍結融解後に運動精子がみられた.本研究から,電気刺激射精法は,野生ニホンツキノワグマから精液を採取するために有用な方法であり,この方法で採取した精液の凍結融解後に少なくとも運動性のある精子が得られることが示された.
著者
岡野 司 大沼 学
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.145-151, 2012 (Released:2013-03-16)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

長崎県対馬において野生の雄チョウセンイタチ19頭を1997年8月から2011年4月にかけて収集し供試した。精巣と陰茎骨を計測し,精巣組織を採取し組織学的に観察した。亜成獣において,精巣サイズと精細管直径は11月から急激に増大する傾向があり,2月ごろに最大となった。成獣において,精巣サイズと精細管直径は2月から6月に増大する傾向があり,9月から1月頃に縮小する傾向にあった。若い個体において4月以降から精巣上体に精子が認められたため,生まれた翌年の4月頃に性成熟に達していると考えられた。成獣の陰茎骨は発達したかぎ状の先端とこぶ状の基部を呈していた。
著者
吉田 洋 林 進 堀内 みどり 坪田 敏男 村瀬 哲磨 岡野 司 佐藤 美穂 山本 かおり
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.35-43, 2002-06-30
参考文献数
28
被引用文献数
3

本研究は,ニホンツキノワグマ(Ursus thibetanus japonicus,以下ツキノワグマと略す)による針葉樹幹の摂食量と,他の食物の摂食量との関係ならびにツキノワグマの栄養状態の年次変動を把握することにより,クマハギ被害の発生原因を食物環境面から解明し,さらに被害防除に向けた施策を提案することを目的とした.ツキノワグマの糞内容物分析の結果,クマハギ被害の指標となる針葉樹幹の重量割合は,1998年より1999年および2000年の方が有意に高く(p<0.05),逆にツキノワグマの重要な食物種の一つであるウワミズザクラ(Prunus grayana)の果実の重量割合は,1999年および2000年より1998年の方が有意に高かった(p<0.05).また,ツキノワグマの血液学的検査の結果,1999年および2000年より1998年の方が,血中尿素濃度は低い傾向にあり,血中ヘモグロビン濃度は有意に高かった(p<0.05)ことより,1998年はツキノワグマの栄養状態がよかったと考えられる.以上のことから,クマハギ被害は,ツキノワグマの食物量が少なく低栄養の年に発生しやすく,ウワミズザクラの果実の豊凶が被害の発生の指標となる可能性が示唆された.したがって,クマハギ被害は,被害発生時期にツキノワグマの食物量を十分に確保する食物環境を整えることにより,その発生を抑えられる可能性があると考えられた.
著者
松本 郁実 高島 一昭 山根 剛 山根 義久 岡野 司 淺野 玄
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.13-17, 2011-03-20 (Released:2012-04-04)
参考文献数
17

(財)鳥取県動物臨床医学研究所は鳥取県中西部において保護される傷病野生鳥獣の治療を行っており,今回過去10年間に搬入された傷病野生鳥獣のうち,タヌキに注目して疥癬罹患状況の調査を行った。タヌキの保護要因としては,交通事故が原因と思われる骨折や外傷が多くみられたが,疥癬に罹患したタヌキも2003年に初めて搬入され,その後も2005年2頭,2006年5頭,2007年4頭,2008年2頭の計14頭が搬入された。月別でみると,タヌキの搬入頭数は3月と9月に多く認められたが,疥癬罹患タヌキはそれらとは少しピークがずれた晩春や秋から冬にかけて搬入された。また,岐阜大学応用生物科学部の野生動物管理学研究センターに搬入された疥癬罹患タヌキの傾向と比較したところ,当研究所および岐阜県の当該施設において,搬入された疥癬罹患タヌキは2008年までは似た形で推移した。
著者
中村 幸子 岡野 司 吉田 洋 松本 歩 村瀬 豊 加藤 春喜 小松 武志 淺野 玄 鈴木 正嗣 杉山 誠 坪田 敏男
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
Japanese journal of zoo and wildlife medicine (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.15-20, 2008-03
被引用文献数
2

Bioelectrical impedance analysis(BIA)によるニホンツキノワグマ(Ursus thibetanus japonicus)(以下,クマ)の体脂肪量FM測定法確立を試みた。クマを横臥位にし,前肢および後肢間の電気抵抗値を測定した。その値をアメリカクロクマに対する換算式に当てはめ,クマのFMを求めた。2005年9月から翌年の1月までの間,飼育下クマを用いて体重BMおよびFMを測定したところ,BMとFMの変動は高い相関(r=0.89)を示した。よって,秋のBM増加はFM増加を反映していること,ならびにBIAがクマのFM測定に応用可能であることが示された。飼育クマの体脂肪率FRは,9月初旬で最も低く(29.3±3.3%),12月に最も高い値(41.6±3.0%)を示した。彼らの冬眠開始期までの脂肪蓄積量(36.6kg)は約252,000kcalに相当し,冬眠中に1,900kcal/日消費していることが示唆された。一方,2006年6月から11月までの岐阜県および山梨県における野生個体13頭の体脂肪率は,6.9〜31.7%であった。野生個体のFRは飼育個体に比較して低かった。BIAを用いて,ニホンツキノワグマの栄養状態が評価でき,この方法は今後彼らの環境評価指標のツールとしても有用であると思われる。
著者
吉田 洋 林 進 堀内 みどり 坪田 敏男 村瀬 哲磨 岡野 司 佐藤 美穂 山本 かおり
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.35-43, 2002 (Released:2008-07-23)
参考文献数
28
被引用文献数
1

本研究は,ニホンツキノワグマ(Ursus thibetanus japonicus,以下ツキノワグマと略す)による針葉樹幹の摂食量と,他の食物の摂食量との関係ならびにツキノワグマの栄養状態の年次変動を把握することにより,クマハギ被害の発生原因を食物環境面から解明し,さらに被害防除に向けた施策を提案することを目的とした.ツキノワグマの糞内容物分析の結果,クマハギ被害の指標となる針葉樹幹の重量割合は,1998年より1999年および2000年の方が有意に高く(p<0.05),逆にツキノワグマの重要な食物種の一つであるウワミズザクラ(Prunus grayana)の果実の重量割合は,1999年および2000年より1998年の方が有意に高かった(p<0.05).また,ツキノワグマの血液学的検査の結果,1999年および2000年より1998年の方が,血中尿素濃度は低い傾向にあり,血中ヘモグロビン濃度は有意に高かった(p<0.05)ことより,1998年はツキノワグマの栄養状態がよかったと考えられる.以上のことから,クマハギ被害は,ツキノワグマの食物量が少なく低栄養の年に発生しやすく,ウワミズザクラの果実の豊凶が被害の発生の指標となる可能性が示唆された.したがって,クマハギ被害は,被害発生時期にツキノワグマの食物量を十分に確保する食物環境を整えることにより,その発生を抑えられる可能性があると考えられた.
著者
岡野 司 村瀬 哲磨 坪田 敏男
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.65, no.10, pp.1093-1099, 2003-10-25
被引用文献数
9 26

岐阜県根尾村において,1998年から2000年にそれぞれ夏から秋にかけて合計21頭の野生雄ニホンツキノワグマ(Ursus thibetanus japonicus)を捕獲した.精巣の大きさを計測した後,精巣組織を採取し組織学的に観察した結果,精巣容量は1〜3歳でほとんど変化がなく,その後4歳で急激に増加し,5歳でピークを迎えた.精子形成は6〜8月に活発で,9月までに退行し,季節変化が明瞭であった.野生雄ニホンツキノワグマにおける性成熟年齢は3〜4歳であると推定された.血清中テストステロン濃度は0.05〜1.78ng/mlの範囲で,平均値±標準偏差は0.43±0.48ng/mlであった.免疫組織学的に4種類のステロイド合成酵素,すなわちcholesterol side-chain cleavage cvtochrome P450, 3β-hydroxysteroid dehydrogenase, 17-αhydroxylase cvtochrome P450およびaromatase cytochrome P450の局在を調べた結果から,ニホンツキノワグマにおいて,ライディッヒ細胞,セルトリ細胞および精細胞はアンドロジェン合成能を持ち,ライディッビ細胞,セルトリ細胞,精子細胞および精祖細胞はエストロジェン合成能を持つことが示された.
著者
岡野 司 村瀬 哲磨 淺野 玄 坪田 敏男
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.1359-1364, 2004-11-25
被引用文献数
2 25

本研究では,犬精液の凍結保存方法を再検討した.4頭のビーグル犬より精液を採取し,混合,遠心濃縮後再度精漿(第3分画)を加えることにより目的の精子濃度を持つ濃度調整精液を作成した.濃度調整精液あるいは原精液を,トリスークエン酸-グルコース希釈液で希釈し,4℃まで冷却し(冷却),次いでグリセロールを添加した同希釈液で2次希釈した.4℃で平衡した後(グリセリン平衡),液体窒素中に保存した.最終精子濃度が一定(1.0×10^8/ml)で最終希釈倍率が2.5〜10倍となるように凍結した場合および最終希釈倍率を一定(6倍)とし,最終精子濃度を0.25〜2.5×10^8/mlとした場合のいずれも凍結融解後における精子性状に有意な影響を及ぼさなかった.一方,0〜26時間の冷却後に1時間のグリセリン平衡をした場合,冷却時間が2および3時間において精子性状が良好であった.また,冷却時間を3時間とし,0〜4時間グリセリン平衡して凍結した場合,融解後の精子性状に有意差は認められなかった.以上のことから,犬精液の凍結保存において,使用した範囲内ではいずれの精子濃度あるいは希釈倍率でも精液を凍結保存できること,および精液の冷却時間を十分に設ける必要があるが,グリセロールの平衡時間は特に設ける必要のないことが示唆された.