- 著者
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橋本 淳
吉野 秀幸
- 出版者
- 大阪教育大学
- 雑誌
- 大阪教育大学紀要. I, 人文科学 (ISSN:03893448)
- 巻号頁・発行日
- vol.53, no.2, pp.15-39, 2005-02-21
J.S.バッハは敬虔なキリスト教信者であり,特に彼のオルガン作品は教会のための音楽が大部分を占める。彼はそのような楽曲に,ある感情や情念を象徴的に表す方法や言語的ともとれる特徴的な表現方法を用いている。本研究の目的は第1に,バッハのオルガン作品を作品が生まれた時代,文化,慣習など様々な文脈から捉え,特に作品の中の言語的な表現に注目しその具体的表現手法について明らかにすることである。第2に,それらが実際の演奏にどう生かせるかについて検討することを通し,現代におけるバッハ演奏はどうあるべきか,また筆者自身バッハの演奏にどう取り組んだらよいのかについて発展的に考察することである。バッハの言語的表現について本研究は,バッハの著名な研究家であるA.シュヴァイツァーの解釈を拠り所とする。彼はバッハの形象的表現や象徴的表現また言語的表現を「痛みのモチーフ」「喜びのモチーフ」といった「モチーフ(動機)」として抽出している。シュヴァイツァーによるこのような解釈に基づいて本研究では,諸々のモチーフによってバッハのオルガン曲がどのような内容を表現しているかを独自の視点を交えながら分析,考察し,その成果を実際の演奏法に応用してみたい。また,過去に創作された作品と演奏者との現代における相互の関わり方,およびバッハの演奏を現代においてどう響かせるかについて考察することも本研究の主要な課題となる。