- 著者
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新谷 周平
- 出版者
- 東京大学
- 雑誌
- 社會科學研究 (ISSN:03873307)
- 巻号頁・発行日
- vol.55, no.2, pp.51-78, 2004-01-31
フリーターやフリーター希望者に特徴的な意識として現在志向や「やりたいこと」志向が指摘され,それに対して,職業や将来への意識を高めるための施策が提起されている.しかし,それらの志向の内実は何であり,彼らはなぜそうした志向性を持つのだろうか.本稿では,フリーター選択プロセスを把握することにより,「やりたいこと」志向とされてきたものの内実を明らかにすることを目的とする.インタビューの分折からは,フリーターを選択し,その状態を維持する要因として,生活手段を獲得するための道具性だけではなく,情緒的安定を可能にする表出性が充足されていることを指摘することができる.「やりたいこと」志向とは,さしあたり表出性を求めながら,道具性の獲得を求めていることを対外的に示す言葉だと解釈することができる.それゆえ,彼らの表出性に配慮しない政策は,その有効性を主張することができないであろう.