著者
石田 弘明 戸井 可名子 武田 義明 服部 保
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.1-16, 2008-05-30
被引用文献数
2

兵庫県、大阪府、埼玉県の都市域に残存する孤立化した夏緑二次林において緑化・園芸樹木の逸出種のフロラを調査した。兵庫県では31地点、大阪府では19地点、埼玉県では16地点の夏緑二次林を調査した。逸出種の出現種数はいずれの地域についても30種を超えており、3地域をまとめたときの総出現種数は60種であった。逸出種の出現種数の70%以上は鳥被食散布型種であったことから、緑化・園芸樹木の夏緑二次林への侵入は主に果実食鳥の種子散布によっていると考えられた。逸出種の中には在来種が数多く含まれていたが、その種数は逸出外来種の2倍以上であった。逸出種の出現種数と夏緑二次林の樹林面積との関係を調べたところ、いずれの地域についてもやや強い正の相関が認められた。また、兵庫県の夏緑二次林で確認された逸出種の出現個体数と樹林面積の間にも同様の相関がみられた。しかし、逸出種の種組成に基づいて算出された各二次林のDCAサンプルスコアと樹林面積の間には、いずれの地域についても有意な相関はみられなかった。このことから、逸出種の種組成に対する樹林面積の影響は非常に小さいと考えられた。兵庫県の夏緑二次林でみられた鳥被食散布型の5種(シャリンバイ、トウネズミモチ、コブシ、トベラ、ヨウシュイボタノキ)について、樹林の林縁部から同種の植栽地までの最短距離を算出し、その距離と出現個体数および分布との関係を解析した結果、ほとんど全ての個体は植栽地から200m以内の樹林に分布しており、これらの種の夏緑二次林への侵入には植栽地からの距離が大きく関係していることが示唆された。これらの知見に基づいて、緑化・園芸樹木の夏緑二次林への侵入・定着を抑制するための方法を提案した。

言及状況

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夏緑二次林を維持するためには、その200m以内に、鳥が種子散布に関わるシャリンバイ、トウネズミモチなどを(仮にそれが在来種だったとしても)植えてはいけないとのこと。「都市域の孤立化した夏緑二次林における緑化・園芸樹木の逸出状況とその特徴」 http://t.co/f95r6W8Z

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