著者
内田 圭 浅見 佳世 武田 義明
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.497-502, 2006 (Released:2007-11-13)
参考文献数
20
被引用文献数
1

A secondary forest was created by afforest of Pinus densiflora in Mt. Rokko which was bare mountain. In recent years, the vegetation has changed due to pine wilt disease and progress of succession, however the changes in secondary forests that have shifted from bare mountain regions have not been clarified. The objective of this study was to comprehensively understand the changes in the areas of secondary forests and species diversity from the 1950's to the present. It was found that succession has progressed and the areas of Quercus serrata forests that have low species diversity have increased. A decrease in the species diversity was not confirmed in Pinus densiflora forests; however the forests have been changed to a community that has many component species of evergreen forests. Based on these results, it is suggested that the species diversity in secondary forests whole Mt.Rokko will decrease in the future. Further, the results indicated that the component species of summer-green forests that had existed in Mt.Rokko before became bare mountain would disappear.
著者
小寺 悦子 武田 義明 青木 務
出版者
神戸大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

研究の目的を,1.年齢計数可能な樹種の範囲の拡大 2.立木の年齢計数の実施に設定し,その基礎としての木材(樹木)の弾性的性質(音速,減衰定数など)の測定,年齢計数の実行を目標とした。1)青木は,各種木材の打音の周波数,時間特性測定と官能評価の相関性および材質評価との関連性を調べ,木材の吸湿度,表面加工(ラッカー塗装)が周波数分布,減衰特性に影響すること,樹種による違いを明らかにした。2)武田は,西宮市の標高300m付近における森林の生態解析の際,95〜130年の6本のアカマツの年齢計測を従来の方法で行い,成長特性を(年輪半径)^2で表現できることを示した。3)小寺は,ベイマツ材からの超音波パルスエコーの波形解析を行い,ノイズ部分が1MHz成分を多く含むのに対し,木を伝播した後受信される反射波の周波数分布では,1MHzよりずっと低い位置にピークを持つことを明らかにし,より内部の年輪からの反射波をノイズから分離して計測できるようにした。しかし,ベイマツ材の場合では1年輪からの反射ごとに超音波の音圧は約1/3に減衰するので,13年輪を透過した超音波は(1/3)^<13>(124dB)に減衰し,市販の超音波探傷器の最大増幅度程度となる。超音波探傷器のパルスエコー検出限界の改善を行ったとしても,百年輪の検出には不十分であると予想されるが,1MHz程度の超音波の減衰定数の文献値には大きなばらつきがあるので今後は更に樹種の検討を必要とする。また,研究の方向の変更も考え,1本の木について各所で年輪を検出し,そのデータの総合の結果として樹齢を求めること,これまでの超音波による年齢計測で得られた蓄積を利用して木材(樹木)の物性研究に利用する方向を積極的に模索することを予定している。
著者
橋本 佳延 中村 愛貴 武田 義明
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.103-111, 2007-11-30
被引用文献数
4

中国原産のトウネズミモチは近年、日本において都市の空地、都市林、里山、都市河川等に逸出、急速に分布拡大していることが確認されており、生育と繁殖力が旺盛で早期に優占群落を形成することから在来の生態系や生物多様性に多大な影響を与える侵略的外来種となることが危惧されている。本研究では都市河川に侵入した外来樹木トウネズミモチの個体群が洪水によって受ける分布拡大への影響を明らかにするために、平成16年10月に大規模な洪水が発生した兵庫県南西部を流れる猪名川低水敷の5.3haの範囲において、その洪水直後と洪水翌年にトウネズミモチ個体群の調査を行い、結果を洪水前に行われた既存研究の結果と比較した。調査ではトウネズミモチの個体数、各個体のサイズ、結実の有無、倒伏状況を記録したほか、空中写真撮影を行い調査地における裸地面積および植被部分の面積を測定した。結果、洪水によって陸域に占める裸地の面積は洪水前に比べ871%拡大し、個体群の主要な構造を形成するサイズ1m以上の個体の1/3が消失した一方で、実生・稚樹個体数は洪水直後の24個体から洪水翌年には49個体に増加した。また洪水によってサイズ1m以上の個体の1/3が倒伏し、洪水後の個体群の平均樹高は洪水前の3.3mから2.2mに低下した。個体群に占める結実個体の割合は洪水翌年が24.5%となり、洪水前の46.8%の約1/2に低下した。洪水翌年における立木個体に占める結実個体の割合は37.5%であったのに対し倒伏個体に占める結実個体の割合は4.5%であった。これらのことから、河川敷のトウネズミモチ個体群は洪水による個体数の減少によってその規模が縮小するとともに、個体の倒伏に伴い結実状況は悪化する一方で、洪水によって形成された裸地に新規個体が参入し、残存個体の繁殖力も立木個体を中心として翌年より緩やかに回復するものと考えられ、洪水によるトウネズミモチ個体群の分布拡大を抑制する効果は軽微であることが示唆された。
著者
山戸 美智子 江間 薫 武田 義明
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.119-126, 2013

1.近畿地方中部の孤立的に残存している半自然草原を対象に,面積と出現種数の関係,小面積化にともない欠落する種の特性などについて調査を行った.<BR>2.草原生植物の出現種数と草原面積の間には,Gleason(1922)とArrehenius(1921)の両モデルで高い正の相関が認められ,小面積化が半自然草原の種多様性低下に影響を及ぼすことが明らかとなった.<BR>3.面積に対して類似した出現パターンを示す種をまとめ,出現種を4つの種群に整理した.それらは,205000m^2以上の草原に分布が偏るA群,33000m^2以下の草原では欠落傾向を示すB群,1000m^2以下の草原において欠落傾向のあるC群,小面積化にともなう欠落傾向の認められないD群である.<BR>4.小面積化によって欠落傾向の認められた種は,総出現種数の約62%を占めていた.絶滅・絶滅危惧種は,面積の減少にともなう欠落が顕著であり,小面積化による影響を強く受けることがわかった.<BR>5.本調査地のなかで最も大面積を有していた曽爾高原においても,出現種数は総出現種数の約79%であり,地域の種多様性維持には不十分であった.また,錨山や市章山のように小面積であっても,これらの草原にしか出現していない種があることも確認された.<BR>6.半自然草原の保全・復元にあたっては,可能な限り大面積を確保することが重要といえる.さらに,本調査地域全体の種多様性を維持するためには,8カ所すべての草原の保全・復元が必要と考えられた.
著者
石田 弘明 戸井 可名子 武田 義明 服部 保
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.1-16, 2008-05-30
被引用文献数
2

兵庫県、大阪府、埼玉県の都市域に残存する孤立化した夏緑二次林において緑化・園芸樹木の逸出種のフロラを調査した。兵庫県では31地点、大阪府では19地点、埼玉県では16地点の夏緑二次林を調査した。逸出種の出現種数はいずれの地域についても30種を超えており、3地域をまとめたときの総出現種数は60種であった。逸出種の出現種数の70%以上は鳥被食散布型種であったことから、緑化・園芸樹木の夏緑二次林への侵入は主に果実食鳥の種子散布によっていると考えられた。逸出種の中には在来種が数多く含まれていたが、その種数は逸出外来種の2倍以上であった。逸出種の出現種数と夏緑二次林の樹林面積との関係を調べたところ、いずれの地域についてもやや強い正の相関が認められた。また、兵庫県の夏緑二次林で確認された逸出種の出現個体数と樹林面積の間にも同様の相関がみられた。しかし、逸出種の種組成に基づいて算出された各二次林のDCAサンプルスコアと樹林面積の間には、いずれの地域についても有意な相関はみられなかった。このことから、逸出種の種組成に対する樹林面積の影響は非常に小さいと考えられた。兵庫県の夏緑二次林でみられた鳥被食散布型の5種(シャリンバイ、トウネズミモチ、コブシ、トベラ、ヨウシュイボタノキ)について、樹林の林縁部から同種の植栽地までの最短距離を算出し、その距離と出現個体数および分布との関係を解析した結果、ほとんど全ての個体は植栽地から200m以内の樹林に分布しており、これらの種の夏緑二次林への侵入には植栽地からの距離が大きく関係していることが示唆された。これらの知見に基づいて、緑化・園芸樹木の夏緑二次林への侵入・定着を抑制するための方法を提案した。
著者
山崎 寛 青木 京子 服部 保 武田 義明
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.481-484, 1999-03-30 (Released:2011-07-19)
参考文献数
21
被引用文献数
22 22

里山の高林化と種多様性の増加を目指して, アカマツやコナラなどの高木優占種を残し。照葉低木類, ササ類の伐採等の植生管理を行った。植生調査は, 兵庫県の里山林整備事業地9ケ所に定置調査区12区を設置し, 管理前から管理後最長3年目までの追跡調査を行った。その結果, 管理前後の植生を比較すると, 管理後種数の明瞭な増加が認められた。特に, 日本海側のアカマツーユキグニミツバツツジ群集とコナラーオクチョウジザクラ群集で著しい種数の増加が見られた。また, 植生管理後増加した種は, 里山の主要構成種であるブナクラスの種が中心であった。したがって, このような植生管理手法は, 里山の種多様性を維持・増加させるのに有効であると考えられた。
著者
山戸 美智子 浅見 佳世 武田 義明
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.1-13, 2004
参考文献数
50

沖縄諸島以南の琉球列島において,半自然草原の群落分類を再検討した結果,ススキクラスの3群団に,4群集と4下位単位が認められた.オーダーについては未決定とされた.琉球列島において,高速道路法面や飛行場といった除草管理下の都市域の造成地に広がるチガヤ型草原は,シロバナセンダングサ,コバナヒメハギ,アメリカホウライセンブリなどの出現によって,新群集のチガヤ-シロバナセンダングサ群集としてまとめられた.本群集は一年生植物,帰化植物,ヨモギクラス,シロザクラスの種の比率が高く,半地中植物やススキクラスの種の比率が低いという特徴をもつ.この特徴は,東北から九州にかけて同様の立地に成立するチガヤ-ヒメジョオン群集と類似しており,本群集は本土のチガヤ-ヒメジョオン群集に対応する琉球列島における除草草原型の群集と考えられた.また,ススキ型の群集として,ススキ-ホシダ群集が認められたが,本群集は2つの下位単位に区分され,この下位単位の分化は管理の有無に対応していた.管理の放棄された立地で認められた典型下位単位は,伝統的な管理地に見られるキキョウラン下位単位とは,種組成や相観の変化に加えて,種多様性も大きく低下していた.このように,琉球列島の半自然草原では,本土と同様に,除草,管理水準の低下といった近年の草原における環境条件の変化が,半自然草原の植物社会に新たな組成群の形成や種組成の単純化などの影響を与えていることが明らかとなった.さらに,旧来の半自然草原は,管理水準の低下だけでなく,草地改良などによっても急速に減少している.今後,生物多様性保全の観点から,琉球列島における半自然草原の詳細な現状把握や保全対策を早急に進める必要性が示唆された.
著者
土井 捷三 武田 義明 五味 克久 田結庄 良昭 今谷 順重 小石 寛文
出版者
神戸大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

本研究は次のことを目的にして行われた。1.「災害と防災」に関する教授用モジュ-ルを作成し、それらを統合し、カリキュラム化する。2.「災害と防災」についての意識調査を実施しながら、地域教材が子どもの学習意欲形成に果たす影響を解明する。3.これらを通し、カリキュラムの研究方法を明らかにしながら、災害と防災のカリキュラムを構想する。第1の目的を具体化するために、教材集を作成することにした。教材集は三年間でほぼ核となるモジュ-ルを完成させるようにし、第一年目は地形と地質に関係した災害と防災の現状を、第二年目は植生と植林に関係した防災対策を、第三年目は災害の原因の契機の一つとなる開発の問題と防災対策を取り上げ、教材化を行った。この場合、六甲山という我々の身近にある山を素材にすることにし、また、研究題目にある「地域性を生かした」としたのもこのことを念頭にしているのである。第2の目的を具体化するために、これらモジュ-ルによる授業前と後に調査を行い、地域学習の、学習意欲の形成への効果について解明した。この結果、これら教材は学習の意欲づけに資するということがわかった。第3の目的については具体化へ向けての方向づけを行った。また、現在のところ地域学習の中で実施することが適当であると提案した。以上が三年間に行ってきた成果である。しかし、カリキュラム化の構想が方向づけに止まっていることは不満であるが、これらの研究に比肩しうるものが不在であることを思うと、十分に成果は達成できたと考える。
著者
松村 俊和 武田 義明
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.131-137, 2008
被引用文献数
1

&nbsp;&nbsp;1. 淡路島の水田畦畔法面における二次草原で,管理放棄後の年数と種数および種組成との関係を明らかにすることを目的として,管理が継続されている管理地と管理放棄後1-6年経過した放棄地で出現種とその被度および高さを調査した.<BR>&nbsp;&nbsp;2. 管理地の出現種数の平均値は25.3種で放棄地よりも有意に大きかった.放棄地での放棄後の年数と出現種数との間には,有意な負の相関が認められた.<BR>&nbsp;&nbsp;3. 積算被度と種数との間に有意な負の相関があった.また,0.2m以下の階層,0.2mを超え0.4m以下の階層および0.4mを超え0.6m以下の階層で,上層の積算被度と種数との間にそれぞれ有意な負の相関があった.<BR>&nbsp;&nbsp;4. 管理地の種組成は放棄後の年数が3年以内の放棄地とは類似していたものの,放棄後の年数が4年以上の放棄地とは異なっていた.<BR>&nbsp;&nbsp;5. 管理地には28種が特徴的に出現していたのに対して,放棄地に特徴的に出現していたのはネザサ類のみであった.<BR>&nbsp;&nbsp;6. 管理放棄による出現種数の減少と種組成の変化は,放棄後数年間という短期間に起こっていた.これは,草刈りによって被度の増加を抑えられていたセイタカアワダチソウやネザサ類が,管理の放棄とともに高さおよび被度を増加させたことによると考えた.