著者
大野 豪
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.202-204, 2000-06-30
参考文献数
6

アワノメイガ属の一種ウスジロキノメイガの幼虫は,タデ科のオオイタドリおよびイタドリを寄主としているが,これらの植物と同所的に生息する他の植物にも食入する場合があることが明らかになった.新たに記録された本種の寄主は以下のとおりである.オオヨモギ,ハンゴンソウ,アキタブキ,オナモミ属の一種(以上キク科),エゾニュウ(セリ科),ギシギシ属(タデ科),カラムシ属の一種(イラクサ科).イタドリ類が生息していない地点においては,これらの植物にウスジロキノメイガが食入する例は知られていない.したがって,上記植物への食入は,偶然による幼虫の移動分散によって生じたと考えられる.得られた羽化成虫は外見上正常であり,これは本種幼虫がイタドリ類以外の植物でも生育可能であることを示している.アワノメイガ属の種ごとの寄主範囲は多様であり,植物の属レベルでの単食性種から,多数の科にまたがる広食性の害虫種まで存在する.ウスジロキノメイガが潜在的に広食性であることは,メス成虫の寄主選好性における遺伝的変化のみによって,寄主範囲の多様化が生じうることを示唆する.本属の寄主選好性の種間・種内変異,およびその遺伝的背景を解明することは,農業害虫を含む植食性昆虫における食性の進化機構を理解する上で重要であると思われる.

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イタドリ虫はなんでも食えるけど親の趣味でイタドリに産み付けられてるってことか。

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イタドリ虫はなんでも食えるけど親の趣味でイタドリに産み付けられてるってことか。 / “CiNii 論文 -  ウスジロキノメイガの寄主拡大に関する知見” http://t.co/HzO4GznjvV

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