著者
大野 豪
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.202-204, 2000-06-30
参考文献数
6

アワノメイガ属の一種ウスジロキノメイガの幼虫は,タデ科のオオイタドリおよびイタドリを寄主としているが,これらの植物と同所的に生息する他の植物にも食入する場合があることが明らかになった.新たに記録された本種の寄主は以下のとおりである.オオヨモギ,ハンゴンソウ,アキタブキ,オナモミ属の一種(以上キク科),エゾニュウ(セリ科),ギシギシ属(タデ科),カラムシ属の一種(イラクサ科).イタドリ類が生息していない地点においては,これらの植物にウスジロキノメイガが食入する例は知られていない.したがって,上記植物への食入は,偶然による幼虫の移動分散によって生じたと考えられる.得られた羽化成虫は外見上正常であり,これは本種幼虫がイタドリ類以外の植物でも生育可能であることを示している.アワノメイガ属の種ごとの寄主範囲は多様であり,植物の属レベルでの単食性種から,多数の科にまたがる広食性の害虫種まで存在する.ウスジロキノメイガが潜在的に広食性であることは,メス成虫の寄主選好性における遺伝的変化のみによって,寄主範囲の多様化が生じうることを示唆する.本属の寄主選好性の種間・種内変異,およびその遺伝的背景を解明することは,農業害虫を含む植食性昆虫における食性の進化機構を理解する上で重要であると思われる.
著者
丸山 宗利 大野 豪
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.112-115, 2011-04-05

Coelophora inaequalis (Fabricius, 1775) is recorded from several localities on the islands of Okinawa-jima and Ishigaki-jima, Okinawa, Japan for the first time. This species is considered to be currently introduced from overseas and possibly already naturalized in these islands. Several color forms are known in this species, but only two forms, Tortoise-shell and Nine-spotted forms, have been found the populations in Okinawa.
著者
貴島 圭介 普天間 斎 喜久村 智子 大野 豪 熊野 了州
出版者
九州病害虫研究会
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.64-71, 2013-11-29 (Released:2015-10-14)
参考文献数
16

園芸作物の施設側面の防虫ネットへのマシン油乳剤噴霧による,施設内へのタバココナジラミ成虫の侵入防止効果を検討した。室内試験において,本種成虫の目合い1mmの防虫ネットの通過率は85%以上であったのに対し,同防虫ネットに100倍および2倍希釈のマシン油乳剤を噴霧した場合,通過率はそれぞれ15.7% と0%であり,顕著な通過防止効果が認められた。野外の施設において,同防虫ネットに2倍希釈のマシン油乳剤を処理した区としない区を設け,施設内のキュウリ葉上におけるタバココナジラミ成虫の密度を調査した結果,調査期間を通して処理区の虫数は無処理区の4分の1程度に抑えられ,マシン油乳剤処理の侵入防止効果が認められた。以上の結果から,目合い1mmの防虫ネットへの2倍希釈のマシン油乳剤噴霧処理はタバココナジラミの侵入防止に効果的であると考えられた。
著者
大野 豪 村山 盛敏 宮里 進 東嘉弥真 勇人 小林 亜古 大濱 俊三 米本 仁巳
出版者
沖縄県農業研究センター
雑誌
沖縄県農業研究センター研究報告 (ISSN:18829481)
巻号頁・発行日
no.8, pp.35-39, 2014-03

石垣島のアテモヤにおいて,花弁が顕著に変形した奇形花の発生を認め,その頻度の経時的変化を明らかにした。着花を促すための剪定・摘葉の時期(7月または8月)にかかわらず,奇形花の発生は開花期間の初期に集中することがわかった。次に,奇形花が人工受粉に適する花なのかどうかを確かめるため,受粉後の受精成功や果実の形状・サイズを奇形花・正常花の間で比較した。その結果,奇形果率と正常果の横径については,いずれの剪定・摘葉時期においても,奇形花と正常花の間に有意な差は認められなかった。一方,結果率については,7月剪定・摘葉樹(人工受粉期間: 8月中旬~下旬)では正常花・奇形花間に有意差はなかったものの,8月剪定・摘葉樹(同: 9月中旬~下旬)においては,奇形花の結果率が正常花のそれよりも有意に低かった。このように,受粉を行う時期によっては奇形花の結果率が劣る場合があることを考慮すると,十分な花数が確保できる場合には,奇形花を人工受粉に用いないほうが得策だと考えられる。8月剪定・摘葉樹でのみ奇形花の結果率が劣った原因のひとつとして,9月の受粉期間のほうが8月の場合よりも相対湿度が低かったため,開花前から花弁どうしの癒合が不十分な奇形花では秋季においてより柱頭が乾燥しやすくなり,受精機能を失いやすいという可能性を考えることができる。