- 著者
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石森 大知
- 出版者
- 「宗教と社会」学会
- 雑誌
- 宗教と社会 (ISSN:13424726)
- 巻号頁・発行日
- no.14, pp.3-22, 2008
ソロモン諸島のクリスチャン・フェローシップ教会(CFC)は、イギリス植民地時代に主流派のメソジスト教会から分離を果たし、独自の社会宗教的な活動を展開してきた。その特徴として、聖霊憑依による宗教的熱狂があげられる。先行研究は、この憑依現象を伝統的信仰に一致するとみなしたうえで、CFCを「伝統の復興」をともなう土着主義運動と位置づけてきた。しかし、CFC信徒は、聖霊憑依と伝統的信仰のつながりを頑なに拒否する。彼/彼女らによれば、聖霊はキリスト教の時代に属するものであり、当然ながら、それ以前の時代にはその憑依も起こることはなかったという。一方、キリスト教化以前の伝統的な霊的存在は、聖霊の出現とともに消え去ったとされ、現在では否定的な意味合いが付与されている。このような当該社会の文化的文脈を踏まえ、CFCは、近年、全世界的に著しく伸展するペンテコステ運動の流れのなかでとらえることが可能である。