著者
伊佐敷 隆弘
出版者
宮崎大学教育文化学部
雑誌
宮崎大学教育文化学部紀要 人文科学 (ISSN:13454005)
巻号頁・発行日
no.23, pp.1-15, 2010-09

「不在因果」とは, 不作為(実行されなかった行為) や否定的出来事(生起しなかった出来事) を, 原因(或いは結果) とする因果関係のことである。### まず, 因果関係一般に関して, 「出来事個体間の因果関係は出来事類型間の関連性を暗黙の前提とする」, 「結果は原因だけでなく背景条件(産出条件の現存と妨害条件の不在)にも反事実的に依存する」, 「原因と背景条件の区別は文脈依存的・人間依存的である」という特徴を明らかにする。これらの特徴を踏まえ, 妨害条件の不在が「原因」として際立つと「不在因果」となることを明らかにする。### その上で, 「不在因果は真正の因果関係ではない」という批判に対して答える。まず,「不在因果は因果的説明の一種にすぎず, 因果関係そのものではない」という批判に対して「或る出来事が『何』であるかということの内に既に他の出来事類型との関連性が含まれており, 因果関係と因果的説明は相互依存的である」と答え, 次に, 「不在因果を認めると, 直観に反するくらい, 原因が多くなる」という批判に対して「原因・背景条件・それ以外の出来事の区別がある以上, 不在因果を認めても, 原因はそうやたらに多くはならない。しかし, 膨大な背景条件の広がりがあることはむしろ自然なことである」と答える。最後に, 「非存在は因果的な力を持たないから原因になりえない」という批判に対し「因果関係一般に既に『妨害条件の不在』という非存在が含まれている。そもそも因果関係とは世界と人間とが共同して作り出した秩序(出来事類型間の関連) であり, 不在因果もそのような秩序のひとつである」と答える。

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